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 楽天モバイルが契約数をじわじわ伸ばしている。2021年8月23日にはMVNO(仮想移動体通信事業者)として提供しているサービスを含め、契約数が合計で500万件を突破したと発表した。

 そんな同社の泣き所が提供エリアだ。人口カバー率(4G)は2021年6月に90%を超えたばかり。NTTドコモやKDDI(au)の99.9%、ソフトバンクの99.8%に比べて物足りない。当初は夏までに96%の達成を目指すとしていたが、半導体不足の影響で2021年内の達成へと後ろ倒しを余儀なくされた。

 「正直言ってローミングコストが本当に高い」。楽天グループが2021年8月に開催した決算説明会では、強気の発言で知られる三木谷浩史会長兼社長がこうこぼした。楽天モバイルは自社の基地局を設置していないエリアをカバーするため、KDDIのローミング(相互乗り入れ)を活用しており、この費用負担が重荷となっている。

 ローミング提供元のKDDIでは2021年4~6月期連結決算で不思議な現象が起こっていた。通信料収入(マルチブランド通信ARPU収入)は料金下げなどでARPU(契約当たり月間平均収入)が下がり、前年同期比で117億円の減収だった。ところが、楽天モバイルからのローミング収入を含めた通信料収入(モバイル通信料収入)は同105億円の増収となったのだ。

相当に無理をしていたはずだが……

 楽天モバイルによれば、契約数が増えるとローミング利用料の支出も増えるため、契約獲得のスピードを抑えているという。これには驚かされた。同社サイトにアクセスすれば分かるが、「本体価格実質1円」「他社からの乗り換えで2万円相当のポイント還元」といったキャンペーンが目白押し。獲得を抑えているようには到底見えず、むしろ相当に無理をして顧客を獲得していると筆者には映っていたからだ。

 もっとも現在提供しているキャンペーンでは商用サービス開始時にぶち上げた「通信料1年間無料」ほどのインパクトはなく、大した獲得を見込めないということなのかもしれない。そう考えると、三木谷会長が決算説明会で言及した「決戦はネットワーク(の人口カバー率)が96、97%になってから。アクセルを踏むのはそのとき」という発言にがぜん期待が高まってくる。まだ全力で戦っていなかったのだ。