スマートフォンの購入時に見かける「頭金」。一般的な頭金とは異なる意味で使われていることに違和感を覚えた人は多いのではないだろうか。携帯電話業界で用いられている頭金は消費者の誤解や混乱を招くとして、見直しの動きが進みつつある。
一般に頭金は、住宅や自動車などを分割払いで購入する際に、代金の一部として最初に支払う金額を指す。契約時にある程度まとまった金額を支払い、残りを分割で支払うイメージだ。しかし、携帯電話業界では「頭金0円」「頭金の値引き」などと安さを訴求する目的で使われることが多い。どういうことか。
頭金の正体は販売店の粗利
関係者の話を総合すると、携帯電話業界における頭金は実質、「販売代理店が携帯電話会社から仕入れた端末に上乗せする粗利」を指す。このため、分割払いと関係なく、一括払いでも頭金が登場する。頭金0円は粗利なし、頭金の値引きは粗利を削って売ることを意味している。
本来と異なる用法が広がった理由は定かでないが、総務省が2007年に開いた有識者会議(モバイルビジネス研究会)の結論を受け、本格導入が進んだ端末の割賦販売がきっかけとされる。それまで0円などでばらまいていた端末の販売価格が一気に上昇し、「安価な印象を与えるために編み出されたフレーズが頭金0円だった」(業界関係者)との指摘がある。
当然、多くの消費者は一般的な頭金を想定しているのでトラブルになる。「頭金0円と聞いたのに1回目の支払いが0円になっていない」「店頭で頭金を支払ったにもかかわらず割賦総額からその分が差し引かれていない」などだ。国民生活センターのWebサイトでも「身近な消費者トラブルQ&A」として注意喚起を促しているほどである。