2019年10月から携帯電話事業に新規参入する楽天モバイルに対し、競合他社から不満の声が上がっている。同社が9月6日の発表会で正式な料金プランを発表しなかったからではない。NTTドコモやKDDI(au)の回線を活用して展開中の「格安SIMサービス」を縮小するどころか、今後も拡販する意欲が満々だったからだ。
楽天モバイルはこれまで、携帯電話大手から通信設備を借りる「MVNO(仮想移動体通信事業者)」だったが、新たな周波数の割り当てを受けて2019年10月以降は通信設備を自ら保有する「MNO(移動体通信事業者)」となる。MVNOとMNOの「いいとこ取り」は許すべきではないというのが競合他社の主張だ。
利便性を理由に当面は継続?
楽天モバイルはMNOサービスを始める2019年10月以降も「顧客の利便性を優先してMVNOサービスを継続する」(大尾嘉宏人常務執行役員)。MNOサービスと同様、MVNOサービスの「スーパーホーダイ」などでも最低利用期間と違約金を撤廃。MNOサービス向けに投入するスマホなどの新商品9機種も「すべてMVNOサービスに対応し、お求めやすい価格で提供する」(同)とアピールした。
肝心のMNOサービスは基地局整備の遅れなどもあり、5000人規模のスモールスタートとなる。軌道に乗るまではMNOとMVNOの両面で顧客の獲得を貪欲に狙うのはまっとうな判断と言える。だが、競合他社が危惧するのはこの状況がずるずると長引くことだ。回線の貸し手であるNTTドコモの吉沢和弘社長も「MNOとMVNOの並行運営は問題ではないか」とけん制する発言を繰り返している。
では、MNOとMVNOの並行運営がなぜ駄目なのか。冒頭で紹介した「クリームスキミング(いいとこ取り)」につながりかねないからだ。最終的には全国をカバーするとしても、当面は多くの顧客獲得で早期の投資回収を見込める東京・名古屋・大阪のエリア展開に専念し、採算性の悪い地方エリアを後回しにできる。その地方エリアではMVNOサービスを中心に販売することで、ローミング費用を抑えながら効率的に顧客を拡大することが可能だ。