携帯電話端末を自社の回線でしか使えないように制限するSIMロックが2021年10月から原則禁止となる。格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)や新規参入の楽天モバイルは現状でもSIMロックを設定していない。携帯大手も一定の条件を満たせば解除しているが取り組み状況には温度差があり、総務省は「(端末)購入者の利便を損なう」「事業者間の競争を阻害する」として原則禁止に踏み切った。
SIMロック関連で残る課題は端末の対応周波数問題だろう。米Apple(アップル)のiPhoneは国内携帯各社の周波数に対応しているが、Android端末はそうとも限らない。端末が移行先事業者の周波数に対応していなければ乗り換えられない。結局、SIMロックを原則禁止にしても乗り換えの阻害要因が残っていることになる。このため、端末メーカーに「すべてのキャリア(携帯電話事業者)へ対応するよう義務付けるべきだ」といった強硬な意見も出ている。
他社の周波数をわざと除外?
端末の対応周波数を問題視する声が多いのは理解できる。実際、Android端末では同じメーカーの同じモデルにもかかわらず、販売事業者によって対応周波数が微妙に異なっていることがある。携帯大手は完全に否定するが、端末のSIMロックを解除しても他社で使いにくいようにわざと「自社ネットワークへの最適化」を強めているのではないかと疑いたくなるようなケースも見受けられる。
ただ、すべてのキャリアへの対応を義務化してしまうと、端末の価格が跳ね上がるのは必至。これまで1社分で済んでいた周波数のテスト工程が4社分に膨れ上がるからだ。今後はキャリアアグリゲーションやデュアルコネクティビティーといった高速化技術で束ねる周波数の組み合わせも複雑になっていくため、テストの手間はさらに増える。すべてのキャリアで快適に使えることを担保するとなると、価格を上げざるを得なくなる。
ある携帯大手関係者はこう指摘する。「『iPhoneがすべてのキャリアに対応しているから他の端末メーカーも』という話になっているが、アップルだからこそ実現できている面がある。高価でも売れるようなブランド力がなく、販売台数の規模でも大きく劣るメーカーが単純にまねしても痛い目に遭うだけ。本音をいえば我々は義務化でも構わないが、日本の端末メーカーはますます苦しい立場に追い込まれることになる」。