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 菅義偉首相が携帯電話料金の引き下げに意欲を示している。就任早々に言明するほどの力の入れようだが、監督官庁の総務省はこれまでも競争促進に向けた施策を次々と打ち出してきた。2019年には通信料金と端末代金の完全分離をはじめ、期間拘束や違約金にまでメスを入れ、現在はMNP(モバイル番号ポータビリティー)手数料の引き下げや無料化も進める。考え得る施策は既に打ち尽くした感があり、「弾切れ」が実情ではないか。

行動に移さない消費者

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が携帯電話の契約数シェアで86.2%(2020年6月末時点)を占める寡占状態を切り崩すには「第4の勢力」に頑張ってもらうしかない。だが新規参入の楽天モバイルや格安スマホを手掛けるMVNO(仮想移動体通信事業者)は低廉な料金で健闘しているものの、なかなか乗り換えが進まない現状がある。

 楽天は提供エリア、MVNOは混雑時における通信速度などで課題を残し、こうした弱点がない「Y!mobile」と「UQ mobile」という携帯大手のサブブランドにうまく抑え込まれてしまっている。今さらサブブランドを禁止するわけにもいかず、かといって楽天モバイルとMVNOだけを露骨に優遇すれば公正競争の観点で問題となり、携帯大手が黙っていないだろう。

 やや乱暴かもしれないが、サブブランドは携帯大手の「一物二価」に近い。携帯大手とほぼ同等の品質のサービスを割安に使えるという点で相当にお得だ。にもかかわらずサブブランドの契約数は両社合計で800万件程度にとどまるとみられ、なぜ移行がもっと進まないのか不思議なくらいである。

 サブブランドに限らず楽天モバイルやMVNOを含め、移行が進まない理由の1つに消費者の腰の重さがある。総務省のWebアンケート調査(2020年3月実施)によれば、通信料金が「高いと思う」と答えた人は37.1%(「安いとも高いとも思わない」は41.5%、「安いと思う」は18.5%)。携帯電話事業者の乗り換え意向を聞くと「検討中」は9.9%、「今後可能性がある」は22.8%にとどまる。事業者の乗り換えを考えていない理由(複数回答)は「手続きが面倒くさいため」(40.4%)が最も多い。