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 NTTドコモがいよいよ経営統合による事業再編に乗り出す。まず第1ステップとして、NTTコミュニケーションズ(コム)とNTTコムウェアを2022年1月1日付(予定)で子会社化。続いて2022年7~9月期を予定する第2ステップで3社が保有する法人事業をすべてコムに統合し、一元的に担う体制とする。

 一方、コムのネットワーク機能は固定・移動ともにドコモ側に統合。「OCN」をはじめとしたコムのコンシューマー向け事業は、コムとドコモが出資するNTTレゾナントにすべて移管し、レゾナントをドコモの完全子会社にする。さらに映像・エンタメ分野の強化に向けてドコモ子会社のNTTぷららをドコモに統合するほか、ドコモ・システムズをコムウェアに統合してソフト開発を強化するという大再編になる。

新生ドコモグループの再編計画
新生ドコモグループの再編計画
出所:NTTドコモ
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 ドコモは2021年10月25日に開いた説明会で、2020年度に1兆6000億円だった法人事業の売上高を2025年度に2兆円超に引き上げるとぶち上げた。3社統合のシナジー(相乗効果)として、2023年度に1000億円、2025年度に2000億円超の利益創出を見込む。あまりに意欲的な目標で驚いたが、目標達成に向けた道のりも相当に険しそうである。

非通信領域の成長に不安

 まず気になったのは法人事業の売上高目標である。移動通信のドコモ、固定通信のコムがそれぞれの商材を持ち寄り、今後は移動と固定を融合したソリューションを展開できるとはいえ、5年間で4000億円の上積みは容易ではない。DX(デジタルトランスフォーメーション)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)の需要は確実に見込めるとしても、これらはKDDIやソフトバンクといった通信大手に限らず、あらゆるITサービス企業がこぞって狙っている分野になる。

 法人事業と並ぶもう1つの大きな柱である非通信領域の「スマートライフ事業」にも不安が残る。10月25日の説明会で同事業の注力分野として挙げたのは「金融・決済」「映像・エンタメ」「電力」「メディカル」「XR」の5つ。このうち電力については「ドコモでんき」の提供を2022年3月に始めると発表しており、販売力がものを言う世界なので成長を見込みやすい。NTTグループの幹部はかつて、「電力サービスはすぐに巻き返せる」と豪語していたことがあった。

非通信領域「スマートライフ事業」の成長戦略
非通信領域「スマートライフ事業」の成長戦略
出所:NTTドコモ
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 残りの金融・決済やメディカルは一定の需要を見込めそうだが、これらの領域も競争が激しい。映像・エンタメは米Netflix(ネットフリックス)などのOTT(Over The Top)が圧倒的な強さを誇り、ぷららとの事業統合で巻き返せるだろうか。XRは今後一気に伸びる可能性を秘めるものの、やはり米Facebook(フェイスブック)や米Microsoft(マイクロソフト)などのOTTが虎視眈々(こしたんたん)と同市場を狙っている。説明会では「新生ドコモグループは2025年度の収益の過半をスマートライフ事業と法人事業で創出する」と宣言したが、頼りなさが残った。