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 KDDIのオンライン専用ブランドpovo(ポヴォ)が好調だ。同社が2021年10月29日の決算説明会で明らかにした契約数は「100万件を超えたところ」(高橋誠社長)。9月13日に新料金povo2.0を発表した時点では「90万件くらい」としていたので、約1カ月半で10万件を上乗せしたことになる。

 もっとも、NTTドコモはオンライン専用ブランドahamo(アハモ)の提供を3月26日に始め、4月末時点で契約数が100万件を突破した。8月6日の決算説明会では180万件を超えたと説明していたので、povoは圧倒的な差を付けられているのが実情だ。ただ新たに打ち出したpovo2.0の「基本料0円」はインパクトが強く、意外に大化けするかもしれないと感じている。

povoは「モバイル業界のDX」

 povo2.0は波乱含みのスタートだった。9月29日の提供開始直後から手続きの遅延や問い合わせ窓口の混雑などを起こし、迷惑をかけたとして契約者に10ギガバイトのデータ通信量を進呈したほどだ。それでも契約数を10万件上乗せしており、11月以降は本格的な拡販を始め、契約獲得をもう一段引き上げたい考えである。

 povo2.0の大きな特徴である「#ギガ活」も本格展開はこれからとなる。#ギガ活とは対象の店舗やサービスにおけるスマホ決済au PAYの利用などに応じてデータ通信量を付与する仕組みだ。高橋社長によると、#ギガ活はまだ十分に浸透しておらず「11月から気合を入れてやる」ような状況だという。

 今後の巻き返しに向け、最大の強みはやはり基本料0円。最近はSIMカードの2枚挿しに対応した端末も多く、米Apple(アップル)のiPhoneや米Google(グーグル)のPixelであれば、eSIMで「2枚目」を手軽に追加できる。10月14~15日にNTTドコモで発生した大規模通信障害を受け、バックアップ回線としてpovo2.0の契約を検討した人も多いのではないだろうか。

 povo2.0では有料サービス(トッピング)の購入などが180日間以上ない場合は利用停止や契約解除となってしまうが、「1枚目で契約していた音声通話のかけ放題だけを2枚目のpovo2.0に移して発信専用に使う」「データ使い放題(24時間)のトッピングをWi-Fiルーターの代わりとしてたまに使う」といった回避策もある。トッピングの種類が今後増えれば、運用の選択肢はさらに広がる可能性がある。

 povo2.0を音声通話専用として使う方法は、固定電話の置き換えにつながっても不思議ではない。固定電話の基本料はNTT東西の加入電話で月額1595~1870円(住宅用、税込み)、通信各社が光回線と一緒に提供する光IP電話で月額550円前後(税込み、以下同じ)。通話料は圧倒的に固定電話のほうが安いが、povo2.0は「5分以内通話かけ放題」のトッピングを付けて月額550円で済む。東京なら「03」などで始まる「0AB~J番号」ではないものの、通信費の節約手段として一考の余地がある。筆者はウィルコム(現ソフトバンク)が以前販売していた、見た目が固定電話風のPHS端末「イエデンワ」を思い出した。