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 NTT持ち株会社が約4兆3000億円を投じるNTTドコモの完全子会社化。TOB(株式公開買い付け)を通じてこれだけの資金がドコモの株主に流れるため、「NTT発の経済対策」と評する声もある。NTTの狙いは分からないでもないが、どうしても腑(ふ)に落ちなかったのがこの投資規模である。

 NTTは4兆3000億円を金融機関からの借り入れで賄うと発表している。同社の有利子負債は2019年度実績で4兆7000億円となっており、今回のTOBで9兆円に膨れ上がる。そこまでしてドコモを完全子会社にする価値はあるのか、4兆3000億円を投じるのであればソフトバンクグループのように海外の有力企業を買収して攻勢に出るほうがよいのではないか、という点が気にかかっていた。ただ、最近の決算説明会などを通じて筆者なりに理解したので紹介したい。

財務基盤は数年で健全な状態に

 「4兆3000億円の借り入れは決して危険な議論ではなく、スコープの中で十分動かしていける構造だ」

 NTTが2020年10月29~30日に開いたイベント「つくばフォーラム2020 ONLINE」。光回線などアクセスネットワークに関する最新の取り組みや研究成果を発表するイベントだが、基調講演に登壇した澤田純社長はドコモ完全子会社化の狙いについても時間を割いて説明した。

 澤田社長によると、有利子負債は9兆円に膨れるが、リース事業の分社化で「1兆1000億円の借金を返す余裕ができている」。さらにこれから実施する債権の流動化を含めると、1兆8000億円はすぐに返済できる見通し。「スタートは(9兆円ではなく)7兆2000億円になる」という。

 シングルAの格付けを受けるには有利子負債対EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)倍率を2倍以内に抑えなければならない。これを踏まえると有利子負債の目標水準は6兆円になり、急いで返済すべきは1兆2000億円。「フリーなキャッシュフローは配当や開発を続けても年間5000億円くらいある。(建物などの資産の流動化も検討しており)2年程度で返せる。これが4兆3000億円のからくり」とした。

 続いて11月6日に開いた決算説明会。債権の流動化に関する見通しが広がり、澤田社長は「実質的な負債増加は2兆2000億円。負債を計画的に返し、従前通り株主還元を継続していきたい」と説明した。つまり、有利子負債が一時的に膨れ上がっても財務基盤は数年で健全な状態に戻り、見かけほどの影響はないというわけだ。「自社株買いを実施しなければ(返済は)2年で終わる」(澤田社長)とも話していた。

NTTが2020年4~9月期の決算説明会で公表した資料。「実質的な負債増加は2兆2000億円」とした。
NTTが2020年4~9月期の決算説明会で公表した資料。「実質的な負債増加は2兆2000億円」とした。
(出所:NTT)
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