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 携帯電話がつながりやすいとされる周波数帯「プラチナバンド」の再割り当てを巡り、総務省の有識者会議が2022年11月8日に報告書案を示した。既報の通り、プラチナバンドの割り当てを求める楽天モバイルの主張をおおむね認めた内容となっている。有識者会議の公開会合では、強気の主張を繰り返す楽天モバイルに対して有識者が苦言を呈する場面もみられた。それだけに「楽天寄り」が前面に出た今回の報告書案にはひっくり返ってしまった。ここまで特定の会社に肩入れした判断は相当に珍しいのではないか。

楽天の「わがまま」、やるせない大手3社

 楽天モバイルがプラチナバンドを渇望する理由はよく分かる。総務省も楽天モバイルを強くして4社による競争を促進させたいのだろうが、プラチナバンドの再割り当ては実に無駄が多いような気がしてならない。

 有識者会議では周波数の有効利用が何度も話題に上ったが、そもそも大手3社が使用中のプラチナバンドを明け渡し、楽天モバイルに割り当てること自体が周波数の有効利用に反する。というのも現状の利用状況を維持したまま、事業者だけをすぐに切り替えられるわけではないからだ。切り替えの空白期間は極力短くするとしても、これまで大手3社が人口カバー率99.7~99.9%まで整備したのと同等以上のものを楽天モバイルが構築するには少なくとも5年以上かかるとみられる。

 移行費用も膨大である。使用中の帯域に楽天モバイルが割り込んでくるため、通信断や品質劣化を防ぐための基地局へのフィルター挿入工事、リピーターと呼ぶ中継局の交換、帯域縮退に伴う容量対策などが必要になる。これらの作業にNTTドコモは1150億円、KDDIは1062億円、ソフトバンクは750億円かかるとした。しかも今回の報告書案で移行費用は譲渡側である大手3社の負担としたため、5G(第5世代移動通信システム)などに予定していた投資(人的資源を含む)を回さざるを得なくなる。

 楽天モバイルはプラチナバンドに空きがないことを承知のうえで新規参入した。現在はプラチナバンドでMCA跡地(845メガ~860メガヘルツ/928メガ~940メガヘルツ)の空きがあるにもかかわらず、「機器のエコシステムがない」「干渉回避のために(上りと下りのそれぞれ)5メガヘルツ幅の利用に限定される」として突っぱねた。同社の立場を考えれば理解できるものの、ただの「わがまま」である。このためにそれぞれ1000億円前後の移行費用を負担させられるとなれば、大手3社はやるせないだろう。割り当て済み周波数の再編ではなく、他の周波数帯の活用などでうまく代替できないものだろうか。