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 携帯電話の値下げ競争が2020年12月に勃発してから1年が経過した。携帯大手3社はモバイル通信料収入の減少で打撃こそ受けたが、各社の力関係に大きな変化は見られず、新規参入した楽天モバイルの躍進が目立った1年だった。他方、気掛かりなのは格安スマホを展開するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。「MVNOは草刈り場になりかねない」との事前予想を覆して各社が奮闘しているものの、厳しい調査結果が出ている。

MVNOからの乗り換えが50%強

 調査会社のMMDLaboが2021年12月10日に発表した「2021年12月通信サービスの利用動向調査」によると、メインで利用しているスマホにおけるMVNOの回線シェアは9.3%だった(調査対象は18~69歳の4万人、調査期間は11月15~17日)。1年前の12.3%から3.0ポイント減少した。楽天モバイルを含む携帯4社の回線シェアは90.7%で、このうちサブブランドは12.8%、オンライン専用ブランドは6.8%となっている。

メイン利用のスマホにおけるMVNOの回線シェアの推移
メイン利用のスマホにおけるMVNOの回線シェアの推移
出所:MMDLabo
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 興味深いのは、サブブランドとオンライン専用ブランド、楽天モバイルをメインで利用している人を対象にそれまで契約していた通信会社を聞いた結果である。サブブランドでは50%強、オンライン専用ブランドでは60~85%が同一の通信会社における移行だったのに対し、楽天モバイルではMVNOからの乗り換えが50%強も占めていたのだ。MVNOの最大の「天敵」は楽天モバイルだった。

サブブランドとオンライン専用ブランド、楽天モバイルをメインで利用している人を対象にそれまで契約していた通信会社を聞いた結果
サブブランドとオンライン専用ブランド、楽天モバイルをメインで利用している人を対象にそれまで契約していた通信会社を聞いた結果
出所:MMDLabo
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 楽天モバイルが新規参入当初に打ち出した「月額2980円(税別)で使い放題」は「もともと中途半端な料金プランだった」(証券アナリスト)。月額3000円の水準は「格安」と呼べるほど安いわけでもなく、ヘビーユーザーにとってはうれしいが同社には提供エリアの問題がある。

 こうした中、携帯大手3社が月額3000円以下のオンライン専用ブランドを投入してきたことで楽天モバイルも対抗を余儀なくされ、月間データ通信量が1ギガバイト以下の場合は0円(1回線目のみ)という破格の料金プランが生まれた。結果として、この一手が毎月の通信料負担を極力抑えたいMVNOのユーザーに刺さり、2021年の躍進につながったと見ることができる。