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デジタル遺品は大きく分けて3種類

 今回はデジタル遺品とは何かという基本について整理する。

 デジタル遺品には、前述のスマホやパソコンの他に、ネット銀行の口座やSNSアカウント、アプリやファイルなど、様々なものがある。物理的な「モノ」があったり無かったり、置き場所が手元だったりネット上だったりと、ひとまとめには言いにくい。一言で表せば「デジタル環境を通してでしか実態がつかめないもの」ということができる。

 大まかに分けると「ハードウエア」「オフラインデータ」「オンラインデータと契約」の3種類だ。

デジタル遺品のイメージ図
デジタル遺品のイメージ図
(筆者作成)
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 スマホやパソコンといったハードウエアは、遺品という意味ではテレビやタンスなどと変わらないが、“故人が残した”スマホやパソコンの本質は物体的な機器ではなく保存されたデータや履歴にある。それらの実態をつかむにはログインしてデジタル環境を起動する必要があり、デジタル遺品の定義と合致すると考える。

 書き込まれた日記帳の価値が書き込まれた文章などにあり、文房具店に置かれた同型番の新品の日記では替えが利かないのと同じだ。ただし、ハードウエアはデジタル遺品ではないとの解釈も存在する。この特集ではハードウエアもデジタル遺品に含まれるとしている。

 ハードウエアの中にはオフラインデータ(インターネットに接続せずに参照やコピーができるデータ)があり、オンラインデータへとつながるリンクや履歴が残されてもいる。

 オフラインデータは、図で示した「家の中」にあるので、インターネットを介した「屋外」の影響は受けにくい。より安定した遺品と言えるが、ハードウエアの故障やロックによってアクセスできなくなるリスクがある。

 オンラインデータと契約は基本的にはハードウエアに依存しないので、パソコンやスマホにかかっているロックが開けなくても他の端末でネットにつないでアクセスすることが可能だ。

 ただし、「オンラインにデータがある」という事実そのものを知り得ないと、たどり着くのは困難だし、遺品の保存状態も外部のサービスのスタンスに委ねられる。サービスの継続に料金の支払いが必要など金銭を伴うケースも多く、放置しておくリスクは高い。

 こうした性質が異なるものを一くくりに「デジタル遺品」とすると混乱してしまう。それぞれの特性を理解して向き合っていくことが大切だ。次回からは事例を交えながらデジタル遺品の対処法を考えていく。

古田 雄介(ふるた ゆうすけ)
1977年生まれ。建設業界と葬祭業界を経て2002年にライターへ転職し、テクニカル系の記事執筆と死の周辺の実情調査を進める。「古田雄介のアキバPick UP!」(ITmedia PC USER)、「インターネット跡を濁さず」(d.365)、「ネットと人生」(インプレス シニアガイド)などを連載。著書に「ここが知りたい! デジタル遺品」(技術評論社)、「故人サイト」(社会評論社)、「死とインターネット」などがある。