ある日、関西で会社を経営しているAさん(60代、男性)が突然死してしまった。
社員の少ない小さな会社で、主要な取引はAさんが一手に引き受けていたため、職場はパニックに陥った。職場にあるAさんのパソコンの中身は見られる状況だったが、直近の取引はすべて私物のスマートフォンでやり取りしており、そのスマホにロックがかかっていたから手に負えない。思い当たるパスワードを数回試したが解除できなかった――。
この事例は、データトラブル対応会社のデジタルデータソリューションに持ち込まれた案件に多少の脚色を加えたものだ。実際、故人のスマホのロックが開けずに残された側が困り果てるというのは、デジタル遺品にまつわるトラブルの典型例といえる。
その中でも、会社を経営していた人が亡くなって影響が出た、というパターンは特殊かもしれない。ただ、ビジネス上の直近のやり取りが個人のスマホの中にしか残されていない状況は、自営業や小規模な職場ではさほど珍しくないだろう。
Aさんのケースはどう対応したらいいのか。順を追って解説していこう。

闇雲にロック解除を試すのは3回まで
Aさんのスマホには他の社員が把握していない可能性のある取引も含めて、直近の仕事上のアクションが詰まっているのは確実だ。一刻も早くメールやメッセージ、通話履歴などを調べて、関係各位に連絡しなければならない。
ただし、闇雲にロック解除を試し続けるのは絶対に避けたほうがいい。スマホはパスワード(パスコード)の入力ミスを連発すると、セキュリティーレベルを高める設計になっているものが多い。