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 2023年における最重要テクノロジーは「ChatGPT」に代表されるチャットボットAI(人工知能)だ。Webを検索せずともユーザーの調べたいことに答えてくれるチャットボットは、Google検索を脅かす存在になると見なされ始めている。

マイクロソフトが「ChatGPTベースのBing」を準備か

 米メディアのThe Informationは2023年1月3日(米国時間)、米Microsoft(マイクロソフト)が2023年3月にも、同社の検索エンジンBingにChatGPTベースの機能を提供する可能性があると報じている。

 ChatGPTベースのBingではユーザーが検索クエリーを入力すると、その結果としてURLのリストが従来のように表示されるだけでなく、ChatGPTが生成した回答文が出所表記付きで出力されるのだという。ユーザーはURLに飛んで原文を読み込まなくても、ChatGPTが生成した文章を読むだけで調べ物を完結できるようになる。

 マイクロソフトはChatGPTの開発元である米OpenAI(オープンAI)に対して2019年に10億ドルを出資するなど、緊密な関係を築いている。既にマイクロソフトは子会社である米GitHub(ギットハブ)を通じて、オープンAIの技術をベースにしたソースコード生成AIの「GitHub Copilot」を提供しているほか、クラウドサービスであるMicrosoft AzureでもオープンAIの巨大言語モデルであるGPT-3をプレビュー版のサービスとして提供している。

 ChatGPTは現在、研究用プレビューとの位置づけであるため無料でデモが公開されているが、オープンAIは基本的にGPT-3などの技術を有償で提供している。一方、マイクロソフトはBingを広告ベースの無料モデルで提供している。そのためChatGPT版のBingは、GPTベースの技術が無料で利用できる唯一の存在になる可能性がある、とThe Informationは指摘している。

チャットボットAIの弱点は「デタラメな出力」

 しかしChatGPTのような巨大言語モデルベースのチャットボットAIには、大きな弱点がある。根拠のないデタラメな内容や人種差別的な表現が含まれる文章を生成してしまうことだ。これは米Meta(メタ)が2022年11月に公開したチャットボットAI「Galactica」が炎上した原因でもあった。

 メタはGalacticaに関する注意書きで「言語モデルは幻覚(ハルシネーション)を見せます。Galacticaのように高品質な巨大データで学習していた場合でも、言語モデルの出力が真実であったり信頼できたりする保証はありません。検証せずに言語モデルのアドバイスに従わないでください」と説明していた。

 筆者は日経コンピュータ2022年12月22日号の「動かないコンピュータ」でGalacticaの炎上事件を取り上げた際、デタラメな内容を出力するハルシネーションが、チャットボットAIの課題であると指摘した。しかしハルシネーションについてより詳しく調べると、単純にハルシネーションを排除するだけでは問題の解決にならないことが分かった。