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 米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)のCEO(最高経営責任者)が2021年第3四半期に、創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏から、これまでAmazon Web Services(AWS)を率いてきたAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏に替わる。このトップ交代は「BtoB」へ重心を移しつつあるアマゾンの変化を象徴するものになりそうだ。

 アマゾンはその祖業がeコマースビジネスであるだけに、典型的なBtoC(消費者向け)事業の企業だと思われがちだ。しかし実は近年、アマゾンの全社売上高に占めるBtoB(法人向け)事業の比率が急上昇しているのだ。

アマゾン・ドット・コムのセグメント別売上高の推移と全体に占めるBtoB事業比率(単位は100万ドル)
「出店者向けサービス」「AWS」「その他」をBtoB事業と定義した
2014年2015年2016年2017年2018年2019年2020年
オンラインストア68,51376,86391,431108,354122,987141,247197,349
物理店舗0005,79817,22417,19216,224
出店者向けサービス11,74716,08622,99331,88142,74553,76280,437
サブスクリプションサービス2,7624,4676,3949,72114,16819,21025,207
AWS4,6447,88012,21917,45925,65535,02645,370
その他1,3221,7102,9504,65310,10814,08521,477
全社売上高88,988107,006135,987177,866232,887280,522386,064
BtoB事業比率20%24%28%30%34%37%38%

 アマゾンが手掛けるBtoB事業といえばクラウドサービスを手掛けるAWSが目立つが、AWSよりも規模の大きいBtoB事業がある。それが「出店者向けサービス(Third-party seller services)」だ。アマゾンのeコマースサイト上で第三者が商品を販売する「Amazon Marketplace」の出店者が支払う販売手数料や、出店者がアマゾンの配送センター(フルフィルメントセンター)や配送網を使用した場合の料金などで、2020年1~12月期の売上高は804億3700万ドル(約8兆4500億円)にも達する。AWSの売上高である453億7000万ドル(約4兆7600億円)の2倍近い規模がある。

商品販売個数の過半を第三者が占める今のアマゾン

 アマゾンのベゾスCEOは2018年4月に公開した「2017年版株主への手紙(2017 Letter to Shareholders)」で、アマゾンのeコマースサイト上における商品販売個数の半数以上を第三者による販売が占めるようになったと明らかにしている。その結果が年間にして8兆4500億円という巨額の手数料・設備利用料収入を生み出している。

 「その他(Others)」の事業セグメントも、広告売り上げが中心であるためBtoB事業に位置付けられる。2020年1~12月期におけるその他の売上高は前年同期比52%増となる214億7700万ドル(約2兆2600億円)だった。広告を中心とするその他事業の成長率は、AWSの30%や出店者向けサービスの50%を上回っている。

売上高の4割弱が既にBtoB事業

 アマゾンがAWS事業の業績を開示し始めたのは、2014年1~12月期からのこと。そこで2014年から2020年までのセグメント別売上高の動向を見ていくと、興味深いことが分かる。2014年から2020年にかけて、アマゾンの本業であるオンラインストア(サイト上での商品やコンテンツ販売)事業の売上高が2.9倍に伸びたのに対して、出店者向けサービスは6.8倍、AWSは9.8倍、その他に至っては16.2倍にまで増加した。その結果、アマゾンの全社売上高に占めるBtoB事業の比率は、2014年の20%が2020年には38%にまで上昇した。