全2486文字
PR

 新型コロナウイルス対策として様々な企業で在宅勤務が推奨される中、VPNに関する発言を耳にする機会が増えた。「大勢が使い始めたので速度が落ちた」「社内からの利用申請が急増した」といった恨み言が中心だが、興味深いものもあった。なんでも「グーグルはテレワークにVPNを使っていない」のだという。

 米グーグルは従業員が在宅勤務をする際にVPNを一切使っていない。インターネット経由で利用できるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の「G Suite」などで業務が完結するから、といった単純な話ではない。開発システムや経理システムといったあらゆる種類の社内アプリケーションが全てインターネット経由で利用できるようになっているため、従業員はそもそもVPNを利用する必要がないのだという。

 同社はこうした社内事情を「BeyondCorp」という取り組みとしてWebサイトや論文で公開している。さらに2017年からはグーグルと同じ手法を一般企業が導入できるよう「Google Cloud」のセキュリティーサービスとして提供してもいる。論文を基にその詳細を見ていこう。

脱VPNの背景に「ゼロトラスト」

 グーグルがVPNを使わなくなった背景には、いわゆる「ゼロトラスト・ネットワーク」の考え方があった。ネットワークは全て危険だと認識し、ネットワークの種類に基づいてアプリケーションへのアクセスを許可しないというのがゼロトラスト・ネットワークである。

 一般企業においては通常、ファイアウオールなどで守られたイントラネットは「安全なネットワーク」だと考えている。社内アプリケーションは「安全な」イントラネットからならアクセスできるが、インターネット経由ではアクセスできない。だから従業員がリモートから作業するためには、VPNで「安全な」イントラネットに接続する必要がある。

 しかしこうした従来の考え方には弱点がある。ファイアウオールなどによるネットワークの「境界防御」が破られ、「安全な」ネットワークの内側に侵入されると、侵入者によって社内アプリケーションへ好き勝手にアクセスされてしまう問題があるのだ。実際に近年、このようなセキュリティー事件が頻発している。標的型攻撃などによって従業員のアカウントが乗っ取られ、それを踏み台に社内ネットワークへの侵入を許してしまうのだ。

 ゼロトラスト・ネットワークの考え方においては、どのような種類のネットワークであっても信頼しない。グーグルもオフィスの中にはプライベートIPアドレスを使った社内ネットワークを構築しているが、それも「信頼できないネットワーク」として定義している。プライベートIPアドレスが付与されただけでは、社内アプリケーションは利用できない。

端末やユーザーによってアクセス制御

 社内アプリケーションへのアクセスは、社内ネットワークからであっても社外からであっても必ず「アクセスプロキシー(認証サーバー)」を経由させる。このアクセスプロキシーで端末の情報やユーザーの属性をチェックすることで、社内アプリケーションの利用の可否を細かく制御しているのだ。

 例えばアプリケーション開発に使用する「バグ追跡システム」には「開発用端末」を使う「フルタイム」の「エンジニア職種」でなければアクセスできない、経理システムには「非開発用端末」を使う「フルタイムまたはパートタイム」の「経理部員」しかアクセスできないといった具合だ。アプリケーションごとに細かいACL(アクセス・コントロール・リスト)を用意している。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

日経クロステック登録会員になると…

新着が分かるメールマガジンが届く
キーワード登録、連載フォローが便利

さらに、有料会員に申し込むとすべての記事が読み放題に!
日経電子版セット今なら2カ月無料