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 米国政府は本当に「GAFA解体」に向かうのか。2021年1月に就任したバイデン大統領による人事が注目されている。GAFA解体を主張する有力研究者の政権入りや独禁当局入りが明らかになったからだ。プラットフォーマーの巨大化がイノベーションの停滞や経済格差の拡大を招いているとの認識が、米国で一気に一般化する可能性がある。

 2021年3月9日(米国時間)には、GAFA解体を主張する若手論客、コロンビア大法科大学院のリナ・カーン准教授が米連邦取引委員会(FTC)の委員に指名される見通しだと複数の米メディアが報じた。カーン氏は、バイデン氏と民主党の大統領候補の座を争ったエリザベス・ウォーレン上院議員が掲げたGAFA解体の公約を理論的に支えた人物だ。

 カーン氏はまだ米エール大学法科大学院の学生だった2017年1月に発表した論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス(Amazon’s Antitrust Paradox)」で、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)を独占禁止法の対象にすべきだと論じて一躍有名となった。2019年に発表した論文「プラットフォームと商取引の分離(The Separation of Platforms and Commerce)」で、アマゾンに加えて米Alphabet(アルファベット)、米Facebook(フェイスブック)、米Apple(アップル)というGAFAのすべてに対象を広げた。

目指すのは反トラスト政策の再転換

 カーン氏が主張するのは、米国の反トラスト(独禁法)政策の転換だ。カーン氏の2017年の論文タイトルは、現在の米国における反トラスト政策の方向性を決定づけたロバート・ボーク氏による1978年の論文「反トラストのパラドックス」を強く意識する。ボーク氏が主張する反トラスト政策のパラドックス(逆説)とは「市場での競争維持のために非効率的な事業者を生き残らせると、商品価格の上昇を招いてしまう」というものだった。このような主張を受けて米政権は反トラスト政策を転換し、企業による競合の買収や淘汰が大幅に認められるようになった。

 緩い反トラスト政策のうまみを最大限に享受してきたのがGAFAだった。検索やソーシャルメディアといったオンラインサービスを無料で提供したり、赤字ギリギリで商品を販売したりすることで「消費者の味方」の立場を維持する一方、競合の買収を繰り返すことでプラットフォームを拡大してきた。それと同時にプラットフォームの力を行使して、あまたの競合を打ち倒してきた。

 巨大プラットフォーマーの行動は、消費者の懐に直接的な害を及ぼしてはいない。しかしイノベーションを阻害したり、プラットフォーマー総取りによる経済格差の拡大を招いたりすることで、結果として消費者にとって害になっているのではないか。だからこそ反トラスト政策は再度、競争の維持や促進を目指すべきだ――。カーン氏らの主張にはこうした問題意識がある。

プラットフォームを規制産業に

 そのためにはどうすべきか。カーン氏の主張は2019年の論文のタイトル「プラットフォームと商取引の分離」にあるように明確だ。プラットフォーム、つまりは第三者が物品やサービスを売買したり、ユーザーとやり取りしたりする場と、その場で行われる商取引とは厳密に分離せよ、というのだ。