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 米Google(グーグル)や米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)による独自の半導体チップ開発が加速している。グーグルはイスラエルで、サーバー用プロセッサーを含むSoC(Systems on a Chip)の開発に乗り出した。アマゾンではネットワーク機器の心臓部、スイッチングチップの開発が進んでいるという。システムを独自技術で染め上げるその姿は、かつてのメインフレーマーを思い起こさせる。

 グーグルは2021年3月22日(米国時間)に、米Intel(インテル)のプロセッサー開発部門の幹部であるUri Frank(ユーリ・フランク)氏が、グーグルにおけるサーバー用チップ設計担当のバイスプレジデントに就任したと発表した。フランク氏はインテルでCoreマイクロアーキテクチャーの開発をけん引してきた人物だ。

 グーグルはフランク氏が率いるサーバー用チップ開発部門をイスラエルに置き、同地で半導体設計技術者を多数雇用する計画だ。インテルもイスラエルにプロセッサー設計チームを置き、優秀なマイクロアーキテクチャーを長年生み出してきた。しかし2代前のCEO(最高経営責任者)であるBrian Krzanich(ブライアン・クルザニッチ)氏の時代に、イスラエルの設計チームは骨抜きにされてしまったのだという。グーグルに移籍したフランク氏の下、インテルのイスラエル設計チームが再生される可能性がある。

 グーグルがイスラエルで開発するのは、プロセッサーに加えて様々な専用チップを集約したサーバー用SoCだ。

 グーグルは既に、サーバーで使用する様々な専用チップを独自に開発している。ディープラーニング(深層学習)の訓練や推論に特化したTensor Processing Unit(TPU)が有名だが、それ以外にも2018年にはビデオのエンコーディングに特化したチップであるVideo Coding Units(VCUs)を実用化したほか、サーバーのファームウエアなどを保護する「Root of Trust(RoT、信頼の基点)」の専用チップであるTitanなども開発している。またネットワークスイッチ用のチップやネットワーク・インターフェース・カード(NIC)用のチップ、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)のコントロールチップなども、半導体メーカーにグーグル専用のカスタム品を作らせている。

ワンチップサーバーが間もなく実現

 既にグーグルのサーバー用マザーボード上には、様々な専用チップ、専用カードがひしめき合っている状態だ。その背景には、トランジスタの集積度が1年半~2年ごとに2倍になる「ムーアの法則」が働かなくなったことがある。CPUの性能向上の速度が鈍化し、従来のような「CPUとソフトウエアの組み合わせ」だけではアプリケーションの性能改善が見込めなくなった結果、専用チップの開発に突き進むようになった。

 しかし専用チップを何個も使うのは、あまりにも効率が悪い。そこで様々な専用チップとCPUを、SoCとして1個のチップまたはパッケージ上に集積する。SoCにすれば消費電力効率が改善するだけでなく、専用チップとCPUの接続も外部バス経由ではなくチップの内部バス経由に変わるので、データ転送のレイテンシー(遅延)改善なども見込める。

 グーグルのAmin Vahdat(アミン・ヴァーダット)フェロー兼バイスプレジデントは同社公式ブログで「SoCが新しいマザーボードになる」と表現する。SoCにはCPUに加えてTPU、ビデオトランスコーダー、暗号化機能、圧縮、リモート接続など様々な専用チップの機能が集約され、「ワンチップサーバー」が実現する。