新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大が、クラウドサービスの需要を急増させている。特に需要が伸びているのはテレワークに欠かせないビデオ会議ツールだ。米グーグル(Google)のHangouts Meetは1日の使用量が2020年1月に比べて25倍に増えたという。
Google Cloud部門のトーマス・クリアン(Thomas Kurian)CEO(最高経営責任者)が2020年4月1日にブログを公開し、こうした現状を明らかにした。同社は3月4日にテレワーク支援のために、Hangouts Meetの有料追加機能を既存のG Suiteユーザーが追加料金を支払わなくても利用できるようにした。最大250人が同時に参加できるビデオ会議機能や最大10万人に対して会議の模様をライブストリーミングできる機能、ビデオ会議の内容をクラウドに保存できる機能などである。
こうした対応をとったところHangouts Meetの使用量が毎日、前日に比べて60%増加するようになった。その結果、1日当たりの使用量が2020年1月に比べて25倍もの水準に達したのだという。
音声・ビデオ通話はクラウド型が主流に
ビデオ会議ツールの使用量急増は他社でも起きている。米マイクロソフト(Microsoft)は2020年3月28日に公開したブログで、新型コロナの感染が激増したイタリアにおいてMicrosoft Teamsの音声・ビデオ通話を利用する月間ユーザー数が775%増加したことを明らかにした。マイクロソフトは当初、新型コロナの感染が拡大している地域でクラウドサービス全体の使用量が775%増えていると発表していたが、その後に内容を訂正している。
興味深いのはグーグルもマイクロソフトもビデオ会議ツールの使用量が増大したという話題を、クラウドサービスの使用量増大の文脈で紹介していることである。音声やビデオ通話のアプリケーションというと、先駆け的な存在だったSkypeはP2P(ピア・ツー・ピア)型だった。それに対して近年の主流は、通信が中央サーバーを介するクラウド型のサービスになった。
実際にグーグルのHangouts MeetやマイクロソフトのTeamsだけでなく、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(Zoom Video Communications)のZoomや米シスコシステムズ(Cisco Systems)のWebexなどもクラウド型である。Skypeもマイクロソフトが2011年に運営会社を買収した後に、クラウド型に移行している。
クラウドに録画を保存、会話はAIが文字おこし
音声やビデオ通話がクラウド型になることで、ユーザーは様々な便利な機能を利用できるようになった。音声・ビデオ通話の内容をクラウド上に録音・録画できるようになったし、一部のサービスでは音声・ビデオ通話でユーザーが話した内容をAI(人工知能)が「文字おこし」してくれるようにもなった。
例えばHangouts Meetは音声が英語である場合に限って、会話の内容をキャプション(字幕)として表示できる。Zoomの場合も、英語の文字おこしサービスであるOtterと連携させることで、会話の内容を文字おこしできる。残念ながら日本語の対応はまだだが、会議をオフラインからオンラインに移行すると、議事録の作成が不要になる未来がすぐそこまで来ている。