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 Chromeブラウザーのユーザーに、良いニュースと悪いニュースがある。2021年3月にリリースした最新の「Chrome 89」では、メモリー管理の仕組みを刷新することでメモリー使用量が22%も減少し、Chromeが軽快に動作するようになった。その一方でユーザーの嗜好を分析するAI(人工知能)である「FLoC」が一部のユーザーの環境で稼働し始めた。

 まずは良いニュースの詳細を説明しよう。米Google(グーグル)のChrome開発チームは2021年4月12日(米国時間)に公開したブログで、プログラムに必要なメモリーを確保したり解放したりするメモリーアロケーターをChrome専用の「PartitionAlloc」に全面的に変更することによって、メモリー使用量が大きく減少したほか、ブラウザーの応答性能やスクロール速度も改善したと発表した。

 大きく減少したのはChromeにおけるブラウザープロセスのメモリー使用量で、64ビット版Windowsの場合は従来に比べて22%、Android版では8%減少したという。またユーザーの入力に対してブラウザーが反応する時間は64ビット版Windowsの場合で9%、Android版で4%改善したほか、スクロールの遅延もWindowsとAndroidの両方で5%短縮したという。

 一般的なプログラム開発においては、メモリーの確保や解放にはプログラミング言語が用意するmalloc関数などを使用し、プログラムにおける実際のメモリー管理はOSが備えるメモリーアロケーターが担うものだ。それに対してChromeの開発チームは、独自のメモリーアロケーターであるPartitionAllocを開発してChromeで使用する。OSが備えるメモリーアロケーターはサーバー用途なども考慮して作られているが、PartitionAllocはブラウザー用途に特化することで効率化を図っているのだという。PartitionAllocはこれまで、レンダリングエンジンのBlinkなど一部でのみ使っていたが、3月にリリースしたChrome 89から全面的に使うようになった。

ユーザーを嗜好でグループ分けするFLoCが有効に

 大量のメモリーを消費するChromeが軽快になるのは喜ばしいことだが、その一方でChrome 89ではプライバシー保護団体などから批判されている機能も有効になった。ユーザーの嗜好をWebの閲覧履歴から分析して、ユーザーをタグ付けする仕組みであるFLoC(Federated Learning of Cohorts、連邦/連合学習によるグループ分け)である。

 グーグルは2022年までに、サイトをまたがってユーザーを追跡するのに使われるサードパーティークッキー(Third-Party Cookie)をChromeで使えなくする計画だ。FLoCはサードパーティークッキーの代わりに、ユーザーの嗜好を分析できるようChromeに実装される仕組みで「プライバシーサンドボックス」などとも呼ばれる。

 FLoCにおいては、Chromeブラウザー内部で稼働するAIがユーザーのWeb閲覧履歴を分析し、ユーザーを嗜好が似た他のChromeユーザーからなる群(コホート)にまとめて、コホートIDをユーザーに付与する。ユーザーが訪問したWebサイト側は、ユーザーのコホートIDを読み取ることでユーザーの興味や嗜好を把握し、それに適した広告を配信する。

 Federated Learning(連邦学習、連合学習などと呼ばれる)はグーグルが開発した機械学習手法だ。異なる個人や組織間で生データを共有しなくても、それぞれが持つデータを反映させた学習(モデリング)ができるという秘密分散学習の1つである。生データではなくモデルの内部パラメーターを共有することで、全体のデータを反映させた学習を進める。