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 販売ではなく消費者による「お試し」を主眼に据えた「ショールーム型店舗」について、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)が興味深い動きを見せている。自社衣料品の路面店を2022年中に米ロサンゼルスに開店する計画がある一方で、2022年3月には書籍やガジェットを陳列・販売する自社店舗を全店閉鎖すると発表したのだ。

 アマゾンは過去5年ほどの間に米国でリアル店舗を急速に拡大してきた。2017年に米国の食品スーパーチェーンであるWhole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)を買収したり、レジの無いコンビニエンスストアであるAmazon Goを多店舗展開したりするなど、実際の売り上げを目的にした店舗を増やしてきた。その一方で、商品の販売よりも消費者への紹介を目指すショールーム型店舗の展開も進めていた。

 ところがアマゾンは2022年3月に、書店のAmazon Booksや雑貨店のAmazon 4-star、ショッピングセンター内に展開してきたAmazon Pop Upといったショールーム型店舗を閉鎖することを明らかにした。

 Amazon BooksはeコマースサイトのAmazon.comで高評価を得た書籍を中心にそろえた書店で、2015年から展開していた。書籍はAmazon.comに投稿されたカスタマーレビューを添えて陳列していた。筆者も米国にあるAmazon Booksを何度か訪れたことがあるが、書籍よりもカスタマーレビューの方が主役なのだと感じさせる、不思議な雰囲気の書店だった。

米シアトルにあったAmazon Books店舗
米シアトルにあったAmazon Books店舗
撮影:日経クロステック
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 雑貨店のAmazon 4-starは、Amazon.comで星4個以上の評価を得た商品だけを販売する店舗で、2018年から展開していた。こちらの場合は書籍だけでなく、生活雑貨や家電、玩具、ペット用品など様々なジャンルの商品を取り扱っていた。ここでも主役はAmazon.comの評価で、店内には「Amazon.comの欲しいものリストに最も多く登録されている商品」を集めたコーナーなどが設けられていた。

米カリフォルニア州バークレーにあったAmazon 4-Star店舗
米カリフォルニア州バークレーにあったAmazon 4-Star店舗
撮影:日経クロステック
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 Amazon Pop Upはショッピングセンター内部の通路やアトリウムなどに設けられた小規模店舗で、スマートスピーカーのAmazon EchoやFireタブレットなど、アマゾン製のデバイスを中心に扱っていた。

 これらの店舗では商品を販売してはいたものの、面積はいずれも小規模で、書籍や雑貨店であるにもかかわらずアマゾン製デバイスの体験コーナーが大きく設けられていたという点で、ショールーム型店舗としての性格が強く出た店舗だった。

店員と会話せずに試着できる衣料店

 米国で展開してきたショールーム型店舗を68カ所閉鎖することを決めたアマゾン。だがその一方で、今後も消費者による「お試し」に主眼を置いた店舗を米国で新規出店する計画でもある。それが2022年内にロサンゼルスに出店する予定の衣料店、Amazon Styleだ。Amazon Styleの出店計画は2022年1月に明らかにした。

 Amazon Styleは、Amazon.comで販売される衣料品を試着して購入できる店舗である。消費者はまず店内に陳列してある様々な衣料品を手に取って、気に入った衣料品があれば2次元バーコードをスマートフォンのAmazon.comアプリケーション(通常のアマゾンでの買い物に使用するアプリ)でスキャンしてアプリに登録する。

 登録した衣料品の試着は店内でアマゾンアプリを使って申し込む仕組みで、試着の準備が整ったら消費者のアプリに「X番の試着室の用意ができました」と通知が届く。その試着室にはアプリに登録しておいた衣料品が置いてあるので、消費者はそれらを試着して、気に入った品があればその場で購入できる。試着するのに店員と会話をする必要がないわけだ。