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コロナで炎上、それ本当?~計算社会科学でSNSデマを解き明かす! 6/3 18時

 米アルファベット(Alphabet)傘下のスマートシティー開発会社である米サイドウオークラボ(Sidewak Lab)が、カナダのトロント市で進めていた都市再開発計画から撤退した。もともと地元とのあつれきを抱えていたプロジェクトだったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不動産市況の悪化がとどめを刺した格好だ。

 2015年に設立したサイドウオークは米グーグル(Google)の兄弟会社にあたる。サイドウオークは2017年10月に、トロント市が進めるオンタリオ湖岸の再開発計画「キーサイド(Quayside)プロジェクト」に参加。2019年6月には1500ページを超える「マスタープラン」を発表し、MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)やセンサーデータの活用などを柱とするスマートシティー建設計画を明らかにしていた。

 35階建ての木造高層ビルを建設して、アフォーダブル(手に入りやすい価格帯)の住宅を供給する。スマートシティーには自動運転車や次世代型路面電車(LRT)の専用レーンを設け、同地域に住む人々やオフィスで働く人々は月額2万円強で、トロント市内の公共交通やライドシェア、シェアサイクルなどを使い放題にする――。マスタープランにはそんな野心的なアイデアが盛り込まれていた。

 しかしサイドウオークのダニエル・ドクトロフ(Daniel L. Doctoroff)CEO(最高経営責任者)は2020年5月7日(現地時間)に声明を発表し、新型コロナ禍の中で12エーカー(約4万8500平方メートル)のプロジェクトを財政的に成立させるのが難しくなったとして、キーサイドプロジェクトから撤退することを明かした。サイドウオークはトロント市に30人のスタッフが働くオフィスを開設し、市民や自治体当局との対話や、プロジェクトの告知、地元スタートアップとの提携などを進めていた。そうした努力は実らなかった。

よくあるウオーターフロント再開発がスマートシティー計画に化けた

 そもそもサイドウオークによる計画は波乱含みだった。グーグルの兄弟会社が手がけるプロジェクトであることから、市民団体がデータの乱用によるプライバシー侵害を懸念していただけではない。オンタリオ州やトロント市など地元の自治体も困惑していた。筆者が2019年11月に地元自治体でサイドウオークとの交渉に当たっていた経験のある人物に話を聞いた際、その人物が「州や市がサイドウオークを誘致したわけではない」と語っていたのが印象的だった。

 地元自治体が考えていたのは、東京ドーム1個分ほどの広さがある工場跡地の再開発だった。トロント市は五大湖の1つであるオンタリオ湖岸に面する産業都市で、工場や倉庫のあったウオーターフロント地域を住宅地やオフィスに改める計画が進んでいた。それにサイドウオークが目を付け、よくある再開発計画が、誰も見たことのないスマートシティー建設計画に変貌したのだ。

データ活用の全ユースケースについて審査を求めた

 地元住民や自治体は2017年10月からサイドウオークと話し合いを始めた。そうした話し合いの中で、住民や自治体はセンサーデータ活用を柱とするスマートシティー計画には、細心の注意を払うべきだと考えるようになっていた。

 筆者が話を聞いた元担当者は「データを活用するあらゆるユースケースについて、そこで使われるデバイスやデータの正当性を独立機関が検証し、住民の合意を得る必要があると考えた。データをプロプライエタリー(私有)のものとせず、オープンにするとの考え方だ」と述べている。

 地元の住民や自治体にとって想定外だったのは、東京ドーム1個分の再開発計画を引き受けたサイドウオークが、その60倍以上の面積があるウオーターフロント地域全体、300万平方メートルの再開発計画を打ち出してきたことだった。それが2019年6月に発表されたマスタープランだ。