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 これまでも量子コンピューターを使ってモンテカルロシミュレーションを実行するアルゴリズムは存在した。従来型コンピューターに比べてシミュレーションを1000倍以上高速化できるとされているが、それには誤り訂正可能な量子コンピューターが必要だった。しかもゴールドマン・サックスと米IBMが2020年12月に発表した研究によれば、量子コンピューターによるモンテカルロシミュレーションには7500個以上の論理量子ビットが必要なのだという。

 それに対してゴールドマン・サックスとQCウエアが今回発表したアルゴリズムは、シミュレーションの高速化は従来型コンピューター比で100倍程度に抑えられる一方で、誤り訂正ができないNISQの量子コンピューターであっても実行できるのだという。

 金融機関は現状、スーパーコンピューターを使って一晩がかりでデリバティブのリスク分析を実行しているのだという。もしその時間を100分の1に短縮できれば、金融市場が開いている昼間の時間帯に、最新の市況を反映したリスク分析ができるようになる。NISQの量子コンピューターが金融機関にとって、非常に大きな価値をもたらす可能性があるのだ。

AWSが量子誤り訂正の新手法を提案

 AWSは2020年12月に、量子誤り訂正の新手法を論文発表している。「シュレーディンガーの猫量子ビット」と呼ぶ技術を用いることで、従来考えられているよりも少ない数の物理量子ビットで誤り訂正を実現する手法を考案したというのだ。

 前述のようにグーグルなどは、誤り訂正によって情報が消えない論理量子ビットを1個作り出すためには、1000個の物理量子ビットが必要になるとしている。それに対してAWSの提案した手法であれば、2000個の物理量子ビットによって100個の論理量子ビットを作り出せるようになるのだという。1000対1の比率が20対1にまで縮まるというのだ。

 AWSもグーグルと同じように、超電導方式の量子ビットを採用する。超電導方式の量子ビットは希釈冷凍機によって絶対零度に近い極低温に冷やす必要がある。グーグルは100万個の物理量子ビットを格納できるような部屋サイズの巨大希釈冷凍機を開発する方針を示している。それに対してAWSは2000個の物理量子ビットであれば、現在のサイズの希釈冷凍機にも格納可能だと主張する。

 AWSは誤り訂正の方式を提案しているだけで、まだ実機を示したわけではない。ゴールドマン・サックスが開発したアルゴリズムが実行できるNISQもまだ登場していない。量子コンピューターの実用化についてはまだ期待があるだけだが、その熱気は高まる一方だ。