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 大手クラウド事業者によるデータセンター脱炭素の取り組みが、ますます過激になっている。米Microsoft(マイクロソフト)は2021年6月、砂漠が広がる米アリゾナ州にMicrosoft Azureの新リージョンを開設した。それに先立つ5月には米Google(グーグル)が「データセンターのワークロードが太陽を追う」との施策を発表している。いずれも太陽光発電の活用を狙うものだ。

 マイクロソフトは2021年6月15日(米国時間)に、Microsoft Azureの新リージョン「West US 3」をアリゾナ州で稼働した。3個のアベイラビリティーゾーン(AZ、データセンターとほぼ同義)があるこのリージョンを同社は「持続可能データセンターリージョン」と呼んでいる。データセンターの電力を二酸化炭素を排出しない太陽光発電で賄うために作ったリージョンだからだ。

太陽光発電150MWを契約

 立地にアリゾナ州を選んだのは、乾燥した気候のため太陽光発電が盛んだからだ。マイクロソフトはWest US 3リージョンで使用する電力を賄うため、同州マリコパ郡にある出力150メガワット(MW)の「Sun Stream 2」太陽光発電所と電力の利用契約を結んでいる。

 砂漠のデータセンターはサーバーの冷却に電力を消費しそうな印象があるが、そうではない。同リージョンのデータセンターにおいては、外の気温が30度までであればサーバー冷却に外気を使用する。1年のうちの半分の時間は、外気冷却だけでサーバー冷却を賄える。また外の気温が30度を超えた場合でも、水を蒸発させることによる気化熱だけを使用した冷却装置(Evaporative cooler)を使ってサーバーを冷却する。

 日本の一般的なデータセンターでは、冷媒ガスを電気を使って圧縮するチラー(冷凍機)を稼働するのが一般的だ。それに対してマイクロソフトのアリゾナリージョンでは、チラーのような電力消費量の多い冷却装置はほぼ使わない。

 マイクロソフトは「2030年までに(二酸化炭素を自社の排出量以上に削減する)カーボンネガティブを達成する」との脱炭素目標を掲げている。その一環として、データセンターやオフィスビルが消費する電力の100%に相当するグリーン電力(再生可能エネルギー)の購入を、2030年までに達成する計画だ。データセンターは1カ所で数十MWの電力を消費するため、立地そのものを太陽光発電が調達しやすい場所に移している。

 グーグルはマイクロソフトよりもさらに進んだ脱炭素目標を掲げる。グーグルは既に2007年の時点で、二酸化炭素排出枠を購入することなどで排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を達成済みだ。マイクロソフトが2030年までに目指す、全社の年間電力使用量に相当する再生可能エネルギーの購入に関しても、グーグルは2017年に達成済みだ。

 さらにグーグルは2030年までに、データセンターやオフィスビルを二酸化炭素を排出しない電力によって24時間365日運営する目標を掲げる。データセンターの電力消費や太陽光発電などの供給力は季節や1日の時間帯によって大きく変動する。現在は再生可能エネルギーだけで需要を賄えない際には、通常の電力を使用している。それを2030年までに、最大時の電力消費であっても再生可能エネルギーによって賄えるようにする。

世界中でワークロードを移動

 そのための施策が「太陽を追う」だ。グーグルのSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)CEO(最高経営責任者)が2021年5月25日(米国時間)に開催した自社カンファレンス「Google I/O」の基調講演で明らかにした。

 グーグルは世界中にデータセンターを設けている。もしあるデータセンターにおいて、電力消費を再生可能エネルギーだけで賄えなくなったら、そのデータセンターにおけるワークロードを中断して、再生可能エネルギーの供給に余裕がある別の地域のデータセンターに移動させる。