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 量子コンピューターの開発競争がにぎやかになってきた。2020年6月にはコンピューター業界の「古豪」が先行する米Google(グーグル)や米IBMに挑戦状を突きつけた。その古豪とは航空宇宙大手の米Honeywell(ハネウェル)。かつてのメインフレーマーが量子での返り咲きを目指している。

 ハネウェルは2020年6月19日(米国時間)に、同社のイオントラップ(捕捉イオン)方式の量子コンピューターが「世界最高性能」を実現したと発表した。ハネウェルの言う世界最高性能とは、IBMが定義する量子コンピューターの性能指標「量子ボリューム」における数値のこと。ハネウェルは同社の6量子ビットを搭載するマシンが「64量子ボリューム」を達成したと主張している。

 量子コンピューターの性能は「0」と「1」の情報を「重ね合わせ」た状態で保持できる量子ビットの数の多さや、量子ビットの読み出しに関わるエラー率の低さなどによって決まる。量子ビットの数がどれだけ多くてもエラー率が高いと有用な計算はできない。そこでIBMは量子ビット数とエラー率の両方を勘案した性能指標として量子ボリュームを提案している。

 IBMは2020年1月に量子ビットを28個搭載した量子コンピューターであるRaleighが32量子ボリュームを達成したと発表している。ハネウェルが達成したという64量子ボリュームはIBMの数値を大きく上回るため、世界最高性能だと主張しているわけだ。2019年10月に量子ビットを54個搭載する量子コンピューターSycamoreによって量子超越性を達成したと発表したグーグルは、IBMの定義する量子ボリュームを採用していないため、比較はできない。

30年ぶりのコンピューター業界復帰

 ハネウェルは間もなく同社の量子コンピューターを商用展開するとしている。同社が独自に提供するだけでなく、米Microsoft(マイクロソフト)と提携してクラウドサービスのAzure Quantum経由でも利用可能にする計画だ。ハネウェルはかつてIBMに対抗してメインフレームを製造していたが、1991年に撤退していた。ハネウェルにとっては実に30年ぶりにコンピューター業界に復活を果たすことになる。

 ハネウェルが手がけるイオントラップ方式の量子コンピューターは、グーグルやIBMが手がける超電導方式の対抗馬として存在感が増している。イオントラップ方式を手がけるスタートアップの動きも活発になっているためだ。