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 「完璧を目指すよりまず終わらせろ(Done is better than perfect.)」「激しく失敗しろ(Fail Harder.)」――。こうしたモットーが示すように、米フェイスブック(Facebook)には失敗を恐れず、失敗からの学びを尊重する文化がある。しかし最近の同社を取り巻く状況からは、そうした文化の限界も見え隠れする。

 失敗を尊重する文化はフェイスブックだけでなくシリコンバレーのスタートアップに共通する美点であり、これこそがシリコンバレーでイノベーションが生まれ続けている要因ですらある。筆者は2019年3月までの4年間シリコンバレー支局で取材をしてきたが、現地で生の声に触れることで目を見開かれたのが、失敗を尊重する文化の重要性だった。

誰も体験したことが無い、それでいて売れる製品をつくるには?

 シリコンバレーのスタートアップが失敗を尊重する理由は明白だ。この地のスタートアップが目指しているのは「誰も体験したことが無い、それでいて売れる」製品・サービスの創造だからである。

 既に誰かが販売しているものと同じ製品やサービスで勝負するのは、資金力に限りのあるスタートアップにとって困難だ。いくら独創性に優れていても、誰も買ってくれないようではビジネスとして継続できない。

 どうすれば「誰も体験したことが無い、それでいて売れる」製品やサービスを生み出せるのか。顧客に「何が欲しいですか」と単純に聞いても無駄だ。顧客は自分が体験したことが無いものは創造できないからだ。しかし製品・サービスが売れるかどうかを決めるのは顧客だ。

 だから、まずは顧客が体験できるモノをつくって顧客に試してもらうしかない。顧客も実物を体験すれば、さすがに何かを言うことはできる。最も単純な答えは「欲しい」か「欲しくない」だろう。場合によっては体験した製品やサービスの気に入らない点を教えてくれるかもしれない。顧客が問題点を教えてくれれば、それを改善することができる。

 つまり「誰も体験したことが無い、それでいて売れる」モノをつくるためには、失敗してそれを改善するサイクルをとにかく早く、できるだけ多く繰り返すしか無い。これこそがシリコンバレーにおいて失敗が尊重される理屈だ。こうした考え方は「リーンスタートアップ」や「デザイン思考」などにも共通する。

心理的安全性も同じ理屈

 ここ最近、「心理的安全性」を重視するマネジメントが流行しているのも、突き詰めれば同じ理由である。心理的安全性とは米グーグル(Google)によれば「『無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ』と信じられるかどうか」であり、同社の社内調査によればこれこそが「チームの効果性に影響する因子」の中でも最も重要なのだという。

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