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 米国政府機関との巨大クラウド契約を巡って、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)と米Microsoft(マイクロソフト)が再び激しく火花を散らしている。今度は米国家安全保障局(NSA)による総額1兆円を超えるクラウド契約だ。NSAはAWSを選んだが、それにマイクロソフトが反発している。

 一連の動きは米国政府調達に関する専門メディアの「Washington Technology」や米国のテクノロジー政策に関する専門メディアである「Nextgov」が2021年7月下旬から8月上旬にかけて報じた。NSAとAWSの大型クラウド契約は公表されたものではなかったが、マイクロソフトが2021年7月21日に米政府監査院(GAO)に対し不服を訴えたことによって明らかになった。

 プロジェクト名は「WildandStormy」で、国家情報機関であるNSAが世界中から集めた膨大な情報を蓄積、分析するITインフラストラクチャーとしてクラウドを利用する。複数年の契約で、総額が100億ドルを超えるとする。NSAはこれまでユタ州に巨大データセンターを設けるなどして、オンプレミスで膨大なデータを管理してきた。それをクラウドに移行する。契約相手としてAWSだけが選ばれたことにマイクロソフトは抗議しており、GAOは2021年10月29日までに裁定を下す予定だ。

MSが獲得した国防総省のJEDIはキャンセルに

 AWSとマイクロソフトは数年来にわたって、米国防総省の巨大クラウド契約「JEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)」を巡る激しい争奪戦を繰り広げていた。国防総省が2017年10月に調達プロセスを開始したJEDIについては、2019年10月に契約先がマイクロソフトに決まったのだが、それにAWSが猛反発していた。

 結局、国防総省は2021年7月6日に、JEDIプロジェクトをキャンセルした。その代わりに新たにマルチベンダーのクラウドプロジェクトである「Joint Warfighter Cloud Capability(JWCC)」を始め、マイクロソフトとAWSから提案を求めている。

 AWSの抗議によってJEDIプロジェクトを手中から逃したマイクロソフトが、今度はAWSからNSAのWildandStormyプロジェクトを奪い取ろうとしている格好だ。

 AWSとマイクロソフトによるバトルの先行きはどうなるだろうか。実は米国における軍や情報機関(インテリジェンスコミュニティーと総称されている)のクラウド契約は、従来のシングルベンダーからマルチベンダーへとシフトしつつある。そこに注目すべきだろう。