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 砂漠が広がる米アリゾナ州で、IT大手による巨大データセンター(DC)の建設ラッシュが続いている。太陽光発電が盛んなため、DCの「脱炭素」を図れるからだ。しかし巨大DCはサーバー冷却のために水を大量に消費する。アリゾナ州では近年、深刻な干ばつが続いていることから、巨大DCの建設ラッシュに反発する声もあがっている。

 本コラムでは2021年6月にも、米Microsoft(マイクロソフト)が太陽光発電の電力を150メガワット(MW)契約する巨大DCをアリゾナ州に開設したことを紹介した。それ以外にも同州では巨大DCの建設が相次いでいる。

アリゾナの州都近郊にIT大手のDCが続々と集結

 米Facebook(フェイスブック)は2021年8月12日(米国時間)に、州都フェニックスに近いメサ市に8億ドルを投じてDCを建設すると発表した。同社はDCで使用するために、地元の電力会社と協力して450MW分の太陽光発電設備を新設するという。マイクロソフトが契約した太陽光発電の3倍の規模だ。

フェイスブックのメサデータセンター完成予想図
フェイスブックのメサデータセンター完成予想図
出所:米フェイスブック
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 NTTの海外事業を統括する英NTTリミテッドもメサ市で「NTT Phoenix PH1」と呼ぶDCの建設を進めており、2022年初めに完成する予定だ。建設中のDC建屋は1棟で消費電力36MW分のサーバーなどを運用できる。同じ敷地には最大7棟のDC建屋が建設可能で、最終的には240MW分のサーバーなどが運用可能な規模だとする。

 この他にもメサ市では米Google(グーグル)が10億ドルを投じてDCを建設中であるほか、米Apple(アップル)も2018年までに20億ドルを投じて、130万平方フィート(約12万平方メートル)のDCや運用管理センターを建設している。

 米国のIT大手は「2030年までに二酸化炭素を排出しない電力によってDCやオフィスを24時間365日運営する」(グーグル)や「2030年までに(二酸化炭素を自社の排出量以上に削減する)カーボンネガティブを達成する」(マイクロソフト)といった、脱炭素に関する野心的な目標を掲げている。そうした事情があるため、乾燥した気候のため太陽光発電が盛んなアリゾナ州に巨大DCが集中し始めているのだ。

フェイスブックのDCに反対の声

 しかし地元のメサ市では巨大DCの建設が相次ぐことに対する懸念の声があがっている。地元メディアの報道によれば、2021年5月にメサ市議会がフェイスブックによるDC建設計画について審議した際には、同DCが1日につき175万ガロン(約660万リットル)の水をサーバー冷却に使用するとして建設に反対する意見が出た。

 米メディアBloomberg(ブルームバーグ)の報道によれば、グーグルがメサ市に建設中のDCは1日につき400万ガロン(約1510万リットル)の水を使用する計画で、これは9200世帯の水使用量に相当するのだという。

 米中西部は近年、深刻な干ばつに見舞われており、住民や企業は節水を強いられている。そうした中で水を大量に消費する巨大DCが、迷惑施設扱いされ始めているわけだ。