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 米Google(グーグル)にとっても、社内スタートアップの育成は容易ではないようだ。同社の社内インキュベーション機関「Area 120」で2022年9月中旬、14件あった製品開発プロジェクトのうち7件をキャンセルしたとの報道があった。

 Area 120におけるプロジェクトのキャンセルは、米メディアTechCrunchが2022年9月14日(米国時間)に報じた。グーグルの広報はTechCrunchに対して、Area 120における開発のフォーカスをAI(人工知能)関連に移行するためにプロジェクトを整理したと説明しており、グーグル自身もプロジェクトのキャンセルを認めた格好だ。

 Area 120はグーグルの有名な「20%ルール」、従業員が勤務時間の20%を自らが決めたテーマに費やしても構わないというルールの中で生み出されたアイデアを、商用化に向けて育成(インキュベーション)するために設けた社内機関である。20%ルールで考案したアイデアに勤務時間の100%を費やせる組織であるという意味合いからArea 120と名付けられた。

 2016年に設けられたArea 120からは、これまでに複数のサービスのベータ版がリリースされ、それらのいくつかはGoogle Cloudなどの正式サービスになったほか、グーグル社外へとスピンアウトしたケースもある。例えばGoogle Cloudで提供されている会話型AIサービスであるDialogflowは、Area 120で開発されたChatbaseがベースになっている。

 エンジニア採用におけるコーディングインタビュー(コーディング試験)のツールであるByteboardはArea 120で開発された後、グーグルの正式サービスになるのではなく、外部ベンチャーキャピタルなどからの出資を受けて独立企業になった。

社外での起業を引き留める目的があったが

 グーグルの20%ルールはGmailやGoogleマップといったグーグル初期のプロダクトを生み出したことで知られるが、2010年代に入ると20%ルールは形骸化が進み、グーグル社内から革新的なプロダクトが生まれることも少なくなっていった。

 さらにグーグルにとって悩ましかったのは、優秀な従業員が社内で新規サービスを開発するのではなく、社外でスタートアップを起業することだった。こうした状況を改善するためにつくられた社内スタートアップ育成機関がArea 120で、開発プロジェクトのリーダーには「Co-Founder(共同創業者)」の肩書が与えられていた。

 今回のArea 120における開発プロジェクトの整理は、グーグルが進めるリストラの一環だと受け止められている。複数の米メディアは2022年7月下旬、グーグルのSundar Pichai(スンダー・ピチャイ)CEO(最高経営責任者)が従業員に対して、2022年の後半からは採用ペースを落とし、社内プロジェクトの整理などを進めると伝えたと報じている。

 TechCrunchの報道によれば、今回Area 120でキャンセルされたのはデジタルクリエーター向けのサービスやショッピング関連のサービス、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)向けのサービスなどで、グーグルにとって重点的な強化対象であるAIに関連しないプロジェクトは整理されたもようだ。

 グーグルにとってより深刻なのは、Area 120のような社内インキュベーターを設けてもなお、社外での起業を選ぶ従業員が絶えなかったことだろう。皮肉なことにその傾向は、グーグルが力を入れるAI領域ほど顕著だ。