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 40代である筆者にとって思い出すと気恥ずかしくなるような、若い頃に流行したサイバー用語が復活の気配を見せている。18年ぶりの新作が公開される映画「マトリックス レザレクションズ」の話ではない。米Facebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEO(最高経営責任者)が入れ込んでいるという「メタバース」のことだ。

 メタバース(Metaverse)とは我々が住む世界とは異なる、コンピューター上に構築された仮想的な宇宙を指す言葉だ。SF作品ではおなじみの概念だが、株式時価総額が1兆ドル規模にまでなったフェイスブックを率いるザッカーバーグ氏の発言で再び注目されるようになった。2021年6月に開催した社内の集会で「フェイスブックはソーシャルメディアの会社からメタバースの会社に変わる」と宣言したり、メディアでのインタビューで「メタバースはモバイルインターネットの後継者になる」などと語ったりしたことから、ここに来て経済メディアなどでメタバースの話題を見かけることが増えている。

 今から15年前、2006年にもメタバースの話題が盛り上がったことがあった。その時の話題の中心は仮想世界の「Second Life」だった。ユーザー数が100万人を超えたばかりのSecond Lifeに米国の大手金融機関やコンピューターメーカーなどが参入し、3次元(3D)CGで作られた仮想世界でアバターを使い、プロモーション活動や発表会などを開催し始めたことが注目された。

調査会社の米Gartner(ガートナー)がSecond Lifeで開催したセミナーの模様
調査会社の米Gartner(ガートナー)がSecond Lifeで開催したセミナーの模様
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 iPhoneもまだ世に出ていない当時、仮想世界に参加する手段はパソコンだけで、ユーザーはマウスとキーボードを駆使しながらアバターを操っていた。それが今度は「Oculus Quest 2」のようなVR(仮想現実)ヘッドセットを使って「メタバースにテレポート」(ザッカーバーグ氏)して、仮想世界の中でリアルなコミュニケーションをするのだという。それがザッカーバーグ氏の主張だ。

 ザッカーバーグ氏のメタバース宣言後、フェイスブックが初めてリリースした関連プロダクトは、8月に発表したリモート会議サービスの「Horizon Workrooms」だった。従業員はOculus Quest 2をかぶって仮想世界の中の会議室に参加し、アバターになって他の従業員と会話する。やろうとしてることが15年前とあまり変わっていないのも、気恥ずかしさを感じさせるポイントである。

Horizon Workroomsによるアバターを使ったオンライン会議の様子
Horizon Workroomsによるアバターを使ったオンライン会議の様子
出所:米Facebook
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 とはいえメタバースに関しては、15年前と状況が変わった点もある。

 まず第一に、若い世代にとってメタバースでの交流が既に当たり前のものになったことが挙げられる。ここで言うメタバースとは「Minecraft(マインクラフト)」や「Fortnite(フォートナイト)」「あつまれ どうぶつの森」といったオンラインゲームのことだ。

 特にマインクラフトや欧米で人気の「Roblox(ロブロックス)」などは、メーカーが作った舞台やシナリオで遊ぶだけではなく、ユーザーが仮想世界の中で作った建築物や独自ゲームで遊べることが人気を集めている。若い世代にとってメタバースは、創作や交流の場として既に存在しているのだ。