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 米国の大統領選挙まで1カ月と少しというタイミングで、米Facebook(フェイスブック)が動いた。同社は2020年9月30日(米国時間)、Instagramのダイレクトメッセージ機能とFacebookのMessengerアプリケーションの統合を間もなく始めると発表した。2019年に構想発表して以来、大きな批判を集め、同社を分割せよとの世論を喚起することになった施策を強行したのだ。

 統合によってInstagramのユーザーはFacebookのユーザーに対して、Instagramのダイレクトメッセージ機能からメッセージを送信したりビデオ通話したりできるようになるほか、Facebookのユーザーも同様にInstagramのユーザーに対して連絡できるようになる。またInstagramとMessengerアプリにおいてはチャットのスレッドが統合されるため、ユーザーは「あのチャットはどのアプリでやったっけ」と迷わずに済むようになる、とフェイスブックのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEO(最高経営責任者)は主張している。

 写真共有に特化したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)であるInstagramと、2000年代前半に大学生を中心にユーザーを集めたもののそのままユーザーの平均年齢が上昇し続け「中高年の社交場」となったFacebookの連携を強化して、ユーザーにどんなメリットがあるというのだろうか。特にInstagramのユーザーはそう思うことだろう。だからこそフェイスブックとしてはメッセンジャー機能を統合して、Instagramのユーザーの関心をFacebookとそのユーザーに向ける必要があった。

フェイスブック分割論に火を付けるきっかけに

 ザッカーバーグCEOがFacebookユーザーのためのMessengerアプリとInstagramのメッセンジャー機能、そして単体のメッセージアプリであるWhatsAppという3つメッセージアプリの「相互接続性」を高めるという方針を発表したのは2019年3月のことだ。「プライバシーを重視したSNSに注力する」ためであり、個人が多数に対して公開の場で情報を発信する従来型のSNSではなく、個人と個人が私的なやり取りをするメッセージアプリがSNSの中心になるとの方針を示したものだった。

 しかし世間はそうは受け止めなかった。じり貧のFacebookを強化するためにInstagramやWhatsAppを統合しようとするたくらみだと判断し、この計画は大きな批判を集めた。

 ザッカーバーグCEOがFacebook/Instagram/WhatsAppを統合する方針を明らかにしたのは、まさに米国で「GAFA分割」の世論が盛り上がり始めたタイミングでもあった。同じ2019年3月には米国の民主党に所属するElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員が大統領選挙への出馬を発表し、その際にGAFA分割を公約に打ち出した。ウォーレン上院議員はGAFAによる同業の買収の目的が競争妨害にあると主張し、GAFAによる過去の買収を取り消すべきだと主張した。フェイスブックによるInstagramやWhatsAppの買収はその最たるものと見なされていた。

 2020年に入ると議会に加えて、市場の番人である米連邦取引委員会(FTC)も、GAFAへの独占禁止法の適用に向けて動き出した。2020年7月には米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)、米Apple(アップル)、米Google(グーグル)、フェイスブックのCEOが米議会下院司法委員会に呼び出され、議員から厳しい質問を浴びせかけられた。米Wall Street Journalは2020年9月、FTCが2020年内にもフェイスブックを独占禁止法違反で提訴する準備に入ったと報じている。