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 Facebookの運営元、米Meta(メタ)が苦しんでいる。2四半期連続で売上高が前年割れした同社は2022年11月9日(米国時間)、全従業員の13%に及ぶ1万1000人を削減すると発表した。皮肉なことに同社では現在、AI(人工知能)の研究開発が絶好調だ。しかしAIが同社の救世主になる、とはいかなそうだ。

 メタのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEO(最高経営責任者)は11月9日に従業員へ送ったメッセージで、同社が大規模人員削減に追い込まれた原因について、自身を含む経営陣による経済情勢の予測ミスがあったと述べた。

 1年前、2021年における同社の業績は絶好調だった。企業のマーケティング活動が新型コロナウイルスの感染拡大に伴いオンラインに移行したことから、デジタル広告が絶好調だったためだ。2021年7~9月期における同社の売上高は前年同期比35%も増加していた。

 メタの誤算はこの傾向が2022年も継続すると予測したことだった。売上高が順調に拡大するとの予測に基づき、メタは2022年に人材採用と設備投資を加速した。それがあだとなったのだ。

従業員は3割増、設備投資に至っては「倍増」

 まずは従業員の増加状況を見ていこう。メタの従業員数は2021年9月末の6万8177人から、2022年9月末には8万7314人にまで増えた。増加数は1万9137人で、増加率は28%にも達する。メタは今後1万1000人を削減してもなお、1年前に比べて従業員数は8000人も多いことになる。

 それ以上にすさまじかったのが、設備投資を中心とする資本的支出(CAPEX)の増加だ。2022年7~9月期の資本的支出は95億1800万ドルで前年同期比109%増、前年同期の2倍以上に増えた。2022年1~9月の累計資本的支出は228億1300万ドルで、わずか9カ月の間に日本円で3兆円を超える設備投資を行っている。

 資本的支出が激増したのは、データセンターやITインフラストラクチャーに多額の資金を投じたためだ。メタのDavid Wehner(デイビッド・ウェナー)CFO(最高財務責任者)は決算説明会で、資本的支出が激増した第1の要因は「AIに必要となる高価なサーバーやネットワーク機器、次世代AIハードウエアに対応できる新しいデータセンター建設」への投資であり、第2の要因は「データセンター面積の継続的な拡張」だとする。

2023年も設備投資額は5兆7000億円

 恐ろしいことに、データセンターやITインフラへの投資は、すぐには止められない。2022年1~12月の年間資本的支出は320億~330億ドルにまで膨らむ見込みだ。さらに2023年も増え続け、年間資本的支出は340億~390億ドルに達する見込みなのだという。現在の為替レートで計算すると約5兆7000億円にも達する。

 メタの売上高は米Alphabet(アルファベット)の半分に満たないが(2022年7~9月期の売上高はメタが277億1400万ドルでアルファベットは690億9200万ドル)、メタの資本的支出はアルファベットを上回る(同期の資本的支出はメタの95億1800万ドルに対してアルファベットは73億ドル)。

 強気な設備投資は今後、巨額の減価償却費となって、メタの財務を長期的に傷め続ける。メタが今回、大幅な人員削減に追い込まれたのは、誤って従業員を増やしすぎただけでなく、強気の設備投資が致命傷になった可能性がある。

AI研究開発は絶好調、AlphaFold2より高速と主張

 皮肉なことに、メタにおけるAIの研究開発は今が絶好調だ。AIを実行するITインフラに数兆円もつぎ込んでいるのだから当然と言うべきかもしれない。

 例えば2022年11月1日(米国時間)には、タンパク質分子の立体構造を予測するAIである「ESMFold」を発表している。ESMFoldはそれまでの業界最高性能のAI、つまりはアルファベット傘下である英DeepMind(ディープマインド)が開発した「AlphaFold2」に比べて60倍以上も高速にタンパク質分子の立体構造を予測できるとする。