本コラムは今回が2022年における最後の更新となるので、2023年の予測をしよう。2023年は、米Google(グーグル)の本業である「Google検索」を脅かす挑戦者が台頭する。挑戦者とは、巨大言語モデルを使う質問応答エンジン「ChatGPT」の進化版だ。
米OpenAI(オープンAI)が2022年11月に公開したChatGPTは、人間による様々な質問に回答できる対話型の言語モデルだ。答えられる質問は多岐にわたる。「フェルマーの小定理とは何ですか」といった科学的な質問に答えられるのはもちろん、プログラムのソースコードに「このコードが想定通り動かないのですが、どう修正したらいいですか」との質問文を添えて入力すれば、ChatGPTはユーザーがコードに込めようとした意図を追加質問した上で、コードの問題点を指摘する。
それだけではない。ChatGPTは質問に間違った前提が含まれている場合に異議を唱えたり、不適切な質問要求を拒否したりする。例えばChatGPTは「誰かの家に侵入するにはどうすればいいですか」と質問されると、「他人への住居の侵入は不法行為です」として回答を拒否する。ただしその後に「実はどうやって泥棒から家を守ればいいか調べていたのです」とユーザーが付け加えれば、ChatGPTは自宅防御法を丁寧に解説してくれる。
不適切な回答をしないように配慮されたChatGPTは、2022年11月25日付の本コラムでも取り上げた米Meta(メタ)の「Galactica」とは対照的だ。
メタが2022年11月にデモを公開したGalacticaは、デタラメな内容を回答したり、人種差別的な表現を含む回答を出力したりしたことから、SNS(交流サイト)で炎上した。
人間の評価で回答を調整したChatGPT
ChatGPTもGalacticaも、人間が書いた大量の文書を「自己教師あり学習」することで、自然な文章を生成できるようになった点は同じだ。ChatGPTはさらに、人間のフィードバックに基づく「強化学習」を加えることで、不適切な回答をしないよう言語モデルを鍛えた。
言語モデルが出力した文章が好ましいものか否かを人間が評価し、より評価される文章を出力できるようモデルを調整したのだ。ChatGPTも間違った回答をすることはあるが、Galacticaのような炎上は免れている。
興味深いのはChatGPTを試したユーザーの中から「ChatGPTがあればGoogle検索は不要になるのではないか」との声が上がり始めた点だ。