全8131文字
PR

生活必要物資をISSに届ける

神武 今回の連載企画は、星出さんの思いから始まっています。第1弾は、星出さんとスーパーラグビーのサンウルブズを運営するジャパンエスアール CEOの渡瀬裕司さんにご登場いただきました。第2弾は、“選手”に最も近い立場にいる人、もしくは一緒に試合をしている人ということで、お2人に対談していただきたいと考え、本日を迎えることができました。

 廣瀬さんは、日本代表のキャプテンを経験する一方で、試合に出ないときもありながら、リーダーシップとかキャプテンシーについて非常に貢献されたと聞いています。

 一方、前田さんが担当されているフライトディレクタも、チームが宇宙ミッションを遂行するためには不可欠であり、そのお立場でチームのモチベーションを高めることに尽力されたと伺っています。

 今回、星出さんはオブザーバーとしての参加となりますが、最初にコメントをいただけますか。

米国からテレビ会議で参加した宇宙飛行士の星出彰彦氏
米国からテレビ会議で参加した宇宙飛行士の星出彰彦氏
(写真:加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

星出 お2人はチームをまとめる立場におられる方々なので、チームのまとめ方、まさにリーダーシップとか、雰囲気づくりなどについて実際に経験されたことをベースにお話しいただければと思います。

 私は2020年に宇宙へ行くときには、ISSの船長を務めることになっています。軌道上のチームをまとめる立場にあるわけで、そのための参考にさせていただきたいと思います。

神武 ありがとうございます。まず、お2人が互いを理解するためにご自身の経歴や仕事の内容を説明していただけますか。ホーム(対談は茨城県つくば市にある、JAXAの筑波宇宙センターで実施)の前田さんからお願いします。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)のフライトディレクタを務める前田真紀氏
宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)のフライトディレクタを務める前田真紀氏
(写真:加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

前田 ISSは、地球の高度400kmぐらいの軌道を、1周90分で回っています。ISSには1日に16回、朝と夜が来ます。そこに宇宙飛行士が常時6名(今後9名に増える可能性もある)いて、彼らがいろんな実験をしたり、広報活動をしたりしています。

 そこに生活必要物資を運ぶのが、ISSへの補給船の「こうのとり」(HTV)です。宇宙飛行士もISSで生活をしているので、それこそ着替えから歯ブラシ、歯磨き粉のような消耗品、実験に必要なサンプルまで、さまざまな物が必要になります。それらを定期的に地上から運びます。打ち上げは年に1回ほどで、それをJAXAが運用しています。

 こうのとりは、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられますが、ISSに着くまでに4~5日がかかります。大きさは全長10m、重さが16トンと巨大です。大型の観光バスぐらいのサイズです。

 それを種子島から打ち上げて、放っておいてもISSに着くわけではないので、地上から運用管制官と言われる人たちがデータを見ながら、コマンドといわれる指令を送って、安全にきちんと飛んでいるかを確認・運用します。それが、我々の「フライトコントロールチーム」(FCT)です。

 FCTは1日24時間、こうのとりを監視しているので、全部で3チームがあります。それぞれにフライトディレクタがいて、全体ではかなりの人数になるのですが、その中でミッション全体の責任を持つ人という意味で「リードフライトディレクタ」を1名アサインしています。

 JAXAはこれまで7機のこうのとりを飛ばしたのですが、私は4号機と6号機のリードフライトディレクタを担当しました。

宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6) 再突入時の前田真紀氏。当時はHTV6のリードフライトディレクタ
宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6) 再突入時の前田真紀氏。当時はHTV6のリードフライトディレクタ
(写真: JAXA)
[画像のクリックで拡大表示]

 FCTのメンバーの半数くらいはJAXAの人間なんですが、宇宙船の製造には日本の電機メーカーや重工メーカーも関わっているので、彼らも運用管制官として参加します。つまり、運用管制チームは混成チームなんです。

 我々はつくばを拠点にしていますが、普段は名古屋や鎌倉などに散らばっている人たちが、運用の際にはこの宇宙センターに集まって一緒に運用します。いつもは別の場所にいるのでお互いの意思疎通など難しい面もあります。そうした中で、定期的に訓練をして、宇宙船をシミュレーターで飛ばしたりします。

 シミュレーションでは、エンジンが止まったとか、通信ができなくなったとか、いろんなものが壊れます。いざというときに冷静に対応できるように訓練するためです。

廣瀬 何が壊れるかは、誰がコントロールしているのですか。

前田 訓練を担当する“悪い人”たちです。

神武 前田さんは今はちょっと立場が変わっていますが、どのような仕事を担当しているのですか。