全8131文字
PR

ドッキングするとそこにお宝

前田 こうのとりは今度、8号機を打ち上げて、9号機で終わりになります。一方で、ISSはもうちょっと先まで運用が続くので、それまで物資を補給するために、日本が今、新しい宇宙船を開発しています。

 こうのとりの略称はHTVですが、新しい宇宙船のそれは「HTV-X」です。こうのとりの技術を使いながら、一度により多くの物資を運べたり、宇宙に行った時にさまざまな実験ができたりします。こうした進化形のHTVを現在設計しています。

 私はこれを担当するマネージャの1人、具体的には「ファンクションマネージャ」として、現行のこうのとりを飛ばしながら、また造りながら、新しい宇宙船の設計をやっています。

元ラグビー日本代表キャプテンで、現在はラグビーワールドカップ2019アンバサダーの廣瀬俊朗氏。高校、大学、社会人、日本代表のいずれにおいてもキャプテンを務めた。現在は、スポーツの普及と教育に重点的に取り組んでいる
元ラグビー日本代表キャプテンで、現在はラグビーワールドカップ2019アンバサダーの廣瀬俊朗氏。高校、大学、社会人、日本代表のいずれにおいてもキャプテンを務めた。現在は、スポーツの普及と教育に重点的に取り組んでいる
(写真:加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

廣瀬 こうのとりが宇宙空間に飛び出したとき、きちんと想定している位置を飛んでいるのか、どのようにチェックしているのですか。

前田 こうのとりは地球の周りを飛んでいるので、地球の中心を基準に位置を計算しています。こうのとりがISSに着くとドッキングするんですが、宇宙飛行士がハッチを開けて中に入ると、“お宝”がいっぱい詰まっているわけです(笑)。

 宇宙飛行士の皆さんは、どんな物がどこに積まれているかをご存じなので、ハッチを開けると真っ先にそこに行くんです。それでバッグを取り出して、何を出しているんだろうなと思うと、やっぱり食べ物です。新鮮な食べ物はすごくうれしいみたいです。

ISSのロボットアーム(SSRMS)で把持された宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)。前田氏がリードフライトディレクタを務めた
ISSのロボットアーム(SSRMS)で把持された宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)。前田氏がリードフライトディレクタを務めた
(写真: JAXA/NASA)
[画像のクリックで拡大表示]
宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)の補給キャリア与圧部とISS間のハッチを開ける星出彰彦宇宙飛行士
宇宙ステーション補給機「こうのとり」3号機(HTV3)の補給キャリア与圧部とISS間のハッチを開ける星出彰彦宇宙飛行士
(写真:JAXA/NASA)
[画像のクリックで拡大表示]

神武 やはりうれしいですか、星出さん?

星出 すごくうれしいです。宇宙食って、どれでもおいしいんですけれど、やはり新鮮な果物や野菜に飢えていることは、ドッキングしてハッチを開けたときにその匂いで気付かされます。

 実はスケジュール上は、ドッキングしてからハッチを開けるのは翌日だったりするのですが、宇宙飛行士はみんな必死で作業を早め早めにやって、その夜に頑張って開けたりしています。

宇宙食の訓練において商業用搭乗員プログラムの宇宙飛行士らと試食を行う、星出彰彦(左の列奥)と野口聡一両宇宙飛行士(右の列奥)。NASAジョンソン宇宙センター(JSC)で
宇宙食の訓練において商業用搭乗員プログラムの宇宙飛行士らと試食を行う、星出彰彦(左の列奥)と野口聡一両宇宙飛行士(右の列奥)。NASAジョンソン宇宙センター(JSC)で
(写真: JAXA/NASA)
[画像のクリックで拡大表示]

前田 残業もいとわない感じですね、皆さん。

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授の神武直彦氏。同氏もJAXA出身で、高精度測位のラグビーへの適用をトップチームから大学、地域スポーツで実施している。他にも宇宙分野とスポーツ分野で、さまざまな取り組みをしている
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授の神武直彦氏。同氏もJAXA出身で、高精度測位のラグビーへの適用をトップチームから大学、地域スポーツで実施している。他にも宇宙分野とスポーツ分野で、さまざまな取り組みをしている
(写真:加藤康)
[画像のクリックで拡大表示]

神武 ちなみに筑波宇宙センターの入り口に、JAXAが開発した「H-IIA」ロケットが横たわっていますが、普段は人工衛星が連結されるロケット上段部にこうのとりが連結され、種子島宇宙センターから宇宙に向かって飛んで行きます。注1)

注1)HTVは種子島宇宙センターからH-IIロケットで打ち上げられた後、NASA(米航空宇宙局)のデータ中継衛星(TDRS)を介して筑波宇宙センターにあるHTV運用管制室(HTVMCR)と通信を確立する。ISSに到着するまでの飛行期間は約4~5日。その間、地上からの指示を受けながら決められた計画通りに飛行し、最終的にはISSの下方700m付近からレーザガイド航法によってゆっくり接近する。

廣瀬 すごい。映画の世界ですね(笑)。

前田 映画ではないですが、我々は「アポロ13号」で起きたようなトラブルを処置しているチームと、まさに同じことをやっています。アポロのチームは我々の目標の1つです。すごく格好いいです。

 通常、トラブルが起きると「何らかのトラブルがありました」という報告が上がってきて対処するんですけれど、そのやりとりがとてもスマートなんですね。短く正確で、余計なことを言いません。私ならついつい余計なことを説明したくなっちゃうんですけれど、それをしないし、させません。実際にアポロ11号が月に着陸したときの管制官の音声が公開されていますが、それを聞くと本当に無駄がなくきれいな運用をしています。