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人ごとにしないお節介で生まれる一体感

神武 ISSに生活必要物資を届けるこうのとりでも、ラグビーの日本代表でも、チームを作ってリーダーシップを発揮して目的を達成するためのマニュアルがあるわけでもないし、先人が培った、洗練された仕組みがあるわけでもなかったと思います。その中で、どうやってチームを作り上げ、リーダーシップを発揮していったかを教えていただけますか。まずは、こうのとりを運用する「フライトコントロールチーム(FCT)」のチームビルディングからお話ししてください。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)のフライトディレクタを務める前田真紀氏。手前にあるのがこうのとりの模型
宇宙航空研究開発機構(JAXA)で宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)のフライトディレクタを務める前田真紀氏。手前にあるのがこうのとりの模型
(写真:加藤康)
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前田 JAXAが最初にFCTを立ち上げたときには、とにかくまずは人選しなければいけないということで、こうのとりの設計・製造に携わってくれた人の中から、人工衛星の運用などの経験者に、まずはJAXAの会議室に集まってもらいました。初号機の打ち上げの2年前ぐらいのことです。

神武 具体的にいつぐらいのことですか。

前田 2007年です。そのときに、これから運用管制のチームを作って運用していくことを説明しました。しかし、こうのとりの運用など誰もやったことがありません。まさにゼロから始める状態でした。

 当時のリーダーは、とにかくゼロから始めるんだから、自分がいいと思ったことを、これはやるべきだと思ったことをやってくれと言いました。必要だと思うことは何でもやってみて、そうした中で取捨選択されていくはずだからという考えでした。

 まずは、JAXAの中でそういうチームを立ち上げ、後はメーカーさんの代表者に声をかけて、運用チームを作っていきました。

JAXAの筑波宇宙センターにある運用管制室
JAXAの筑波宇宙センターにある運用管制室
(写真:加藤康)
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 チームビルディングという観点で最も役に立ったと思うのは、先ほど(前回を参照)もお話した訓練です。我々の目標は非常にクリアで、チームのメンバーが1つの卓に座って、1機の補給船を安全に飛ばすことです。このクリアな目標に向かって、自分がどういう立場で貢献できるかを、各自で考えてもらう。

 シミュレーションの訓練では、いろんな箇所が壊れます。自分の担当とは関係のない箇所も当然、壊れたりします。でもそれを隣で起きていることだからといって、単に座っていればいいわけではありません。常に自分に跳ね返ってきたらどうなる、ということを考えて訓練する必要があります。そういう意味で、我々のチームは他人事にしない“お節介がいる”チームになったと思います。

神武 でも、人にはやはりパーソナリティーがあって、あんまり他人に介入したくない人、されたくない人もいると思います。

前田 運用の場でそれを言っていたらうまくいかないので、とにかくそれはやってくださいと言います。それは、私は必要条件だと思っていますが、チームとして自然にそうなっていった感もあります。でも、物事を深く考え込んでしまうタイプの人は、管制官には向かないかもしれないです。比較的広い視野でモノを見られる人が多いと思います。

宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)のミッション成功を祝して記念撮影を行うHTV関係者。前田氏は中央付近にいる
宇宙ステーション補給機「こうのとり」6号機(HTV6)のミッション成功を祝して記念撮影を行うHTV関係者。前田氏は中央付近にいる
(写真:JAXA)
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