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キャプテン外れても憧れの存在になれる

神武 では、廣瀬さん、ラグビー日本代表でのチームビルディングについてお話しいただけますか。2015年のワールドカップで優勝候補の南アフリカ代表に勝つなど、ラグビーファンでもあそこまでの活躍は想像していなかったと思います。

元ラグビー日本代表キャプテンで、現在はラグビーワールドカップ2019アンバサダーの廣瀬俊朗氏。高校、大学、社会人、日本代表のいずれにおいてもキャプテンを務めた。現在は、スポーツの普及と教育に重点的に取り組んでいる
元ラグビー日本代表キャプテンで、現在はラグビーワールドカップ2019アンバサダーの廣瀬俊朗氏。高校、大学、社会人、日本代表のいずれにおいてもキャプテンを務めた。現在は、スポーツの普及と教育に重点的に取り組んでいる
(写真:加藤康)
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廣瀬 2012年に、ワールドカップに向けたプロジェクトがスタートしたときは、チームがあまりいい状態にありませんでした。そこで当時キャプテンだった私がこんなチームを作りたいとか、皆が憧れる存在になりたいと言っても、あまり伝わらないと思ったので、まずはいい人間関係を構築したいと考えました。

 それができて、皆が仲間のことを好きになってから、こんなチームになりたいというようなことを言ったらすごく伝わると思いました。だから最初は本当にお互いのことを、家族みたいに感じるようにいろいろ仕掛けました。

 その1つは、本当に簡単なことなんですが、例えば人の名前を呼ぶときにニックネームで呼ぶことです。単に「廣瀬」と呼ぶのではなくニックネームで呼んだり、「昨日、何してたん?」など、何らかのコミュニケーションを取ったりすることによってお互いをもっと知ったり好きになったりすることを大事にしてきました。

 そうやってお互いを好きになると、選手自身が「日本代表って、いいチームやね」と、広報マンのようになってくれたんです。選手が生き生きしてくると、周囲も応援したくなるという相乗効果が生まれていきました。

 その後に、憧れの存在になるために頑張ろう、そのために勝とう、ということにフォーカスしていきました。この部分については、私自身がキャプテンを外されてからの話です。

 憧れの存在には、試合に出て活躍する人もいますが、別に試合に出ていなくてもできることがたくさんあると考えました。例えば、今日の対談もそうですけど、ここですごくいい話ができれば、ラグビー日本代表が多くの人の憧れの存在に近づくじゃないですか。私の居場所はこれだと思ったんです。

 私みたいに言葉で伝えるのが得意な人もいるし、子どもにサインを求められたときにカッコいいサインをして「また応援してな」と言ったら、それは子どもの憧れの存在になりますよね。

 だから、目標と目的をしっかり分けて考えられたことが、チームを作る上でとても重要だったと考えています。キャプテンから外されたときも、私は新キャプテンのリーチ・マイケル選手のサポートとか、いろんな部分でラグビーの価値を高めるお手伝いをできるような場所があったので頑張れました。

 もちろん、キャプテンを外されて本当につらいときはありました。でも、やはり仲間のことをすごく好きだったんですね。この仲間と一緒にもっとラグビーをしたいなと思っていました。

2015年4月にワールドカップの視察で、英国のブライトンを訪問した際のひとコマ。左の上が廣瀬氏
2015年4月にワールドカップの視察で、英国のブライトンを訪問した際のひとコマ。左の上が廣瀬氏
(写真提供:廣瀬俊朗)
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 あと、キャプテンをやっていたときに調子良かった人が、キャプテンを外された途端に腐っていたら、格好悪いですよね。ここで頑張ったら、また新しい自分に出会えるのかなと思ってマインドセットを変えました。そうしたら、ワールドカップに出場する31人のメンバーに選ばれました。そのおかげで今日、筑波宇宙センターに来れたわけです(笑)。