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「ワンチーム」にするための仕掛け

神武 山方さんのように宇宙飛行士を訓練する立場では、どのように宇宙飛行士を支えていたのですか。

山方 訓練が終わった後に宇宙飛行士たちとよく“飲みニケーション”をしていました。例えば、ロシアにある訓練で有名な“星の街”のパブで地ビールを飲みながらその日の訓練について振り返ったりしました。

 星出さんが「今日の訓練は山方君から見てどうだった?」などと聞いてくるので、「そうですね。あのときにはもう少しこういう方法を試してみてもよかったかもしれないですね。でも、こういうところはすごくよかったですよね」みたいな感じでずっと話をしていました。

 そんな話をしていると、いろいろな人たちが集まってきます。そこで、誰が積極的に話しているかとか、この人は宇宙飛行士たちと十分にコミュニケーションを取れるようになっているか、などを観察していました。

 先ほど太田さんはフィールドでプレーをしている選手のボディーランゲージを見ると言われましたが、私の場合は宇宙飛行士がそのときに与えられたタスクに対してどのように考え、どのように動くかを観察していました。

神武 太田さんの場合はどうですか。スーパーラグビーに所属するサンウルブズの選手は、日本人だけではありません。外国人選手も多くいます。

太田 サンウルブズでは選手が招集されてから本番までの準備期間が短い中で、パフォーマンスを発揮しなければいけません。まとまった1つのチーム、つまり「ワンチーム」にするための仕掛けを、僕の立場でも、コーチの立場でも、選手の立場でも、1週間のトレーニングの中に入れ込みます。

 ラグビーチームでは、まずは選手同士が互いに心が許せる仲間にならなければいけません。たとえ英語がしゃべれなくても、ボディーランゲージとか、片言の単語でもしゃべれるじゃないですか。そういう仲間づくりを初期の段階で結構やります。

 例えば「ミニチームチャレンジ」では、選手とコーチを4グループに分けてチームをつくります。選手、コーチ、スタッフも含めて、コップを並べてボウリングみたいな感じで、ピンポン球を投げてワンバウンドでどこに入るかで点数を合計していく。それで、どのチームが何点取ったかを競います。

 そのように、何か1つの目標を定めて皆でそこに向かっていくと、自然に会話が生まれて互いにコミュニケーションを取るようになります。戦略を立て、チームのタスクを遂行するようなコミュニケーションがちょっとずつ生まれてくるのです。そういうことを繰り返しやっていきます。

 僕が観察している中では、選手を招集したばかりのときは日本人はどうしても消極的な傾向があります。一方で外国人のコーチは選手によく質問をします。最初に答えるのは外国人選手ばかりですが、1~2カ月もすると、日本人も同じように答えられるようになっていきます。すると、おのずとプレーの質も上がってくる感じがします。