全2339文字
PR
 職場のリーダーとして、部下や後輩に指導や注意をする機会が増えてきました。ですが、部下に指示をしても、なかなか言うことを聞いてくれず、期待する行動につながりません。それどころか、注意すると不機嫌になる部下もいます。どうしてみんな、やる気を出して自主的に動いてくれないのでしょうか。自分の言葉が部下に響いていないと落ち込む日々です。どうすれば、部下や後輩に指示が響くようになるでしょうか。

 リーダーは、自分の上司や部下、社内の関係部署や社外の関係者など、さまざまな人間関係の中で仕事を進める立場にあります。新たな活動に取り組むことになれば、これまで付き合いのなかった人とも関係を築いていかなければなりません。

 リーダーがリーダーシップをとるためには、他者と信頼関係を築いて、いかに他者を動かしていくかが大切となります。人を動かすには、どのようにすればよいでしょうか。その前提となる考え方は、2つに分けることができます。

 1つは、人間が持っている共通の傾向に注目し、他者に働き掛ける方法です。もう1つは、人には1人ひとり違いがあることを前提として他者に働きかけるものです。

 今回は、人間の共通点に注目したアプローチを考えてみましょう。

説得力の6原則

 人間の持つ共通点に注目して他者を動かすときに有効な考え方が、米国の社会心理学者であるロバート・B・チャルディーニ氏による「説得の基本原則」です。チャルディーニ氏は、人間の普遍的傾向に注目し、社会心理学の実験を通じて、人を動かすための6つの基本原則を示しました。

第1の原則:「好意」

 人が一番心を動かされるのは、好意的な人の言動です。自分に好意を示してくれたり、自分と共通点を持っていたりする相手に応えようとします。自分が信頼できると思える人の言動は、なによりも説得力を持ちます。また、共通の関心事を持った相手には、親しみを感じやすくなります。

第2の原則:「返報性」

 人は、誰かに何かをしてもらうと、「お返し」をしようとする傾向があります。親切に接してもらえば、同じように親切を返そうとします。相手に対して協力的な態度で親切に接することにより、相手も同じ態度を返してくれやすいといえます。

第3の原則:「社会的証明」

 他の誰かがやっていることは、無意識に正しいと思い込んでしまう傾向です。人は、自分と共通点の多い人のやっていることを真似(まね)しやすくなります。人の心は、無意識のうちに周囲がどう考えているかをいつも気にしています。「○○さんもやっているよ」と伝えることで、相手をその気にさせることができます。

第4の原則:「一貫性」

 「自分で決めたことはやり遂げる」という、決めたことは最後までやり遂げようとする特性です。人は、他人が見ている場で約束したとき、できるだけそれを最後まで守ろうとします。約束したことに対し、一貫性を守ろうとして、その事柄を続けていこうとします。相手から自発的にコミットメント(約束)を引き出すことで、行動につながります。

第5の原則:「権威」

 権威を持った人の言動によって、人の心は動かされる傾向があります。「自分の見識で判断している」と思っていても、実際には、権威を信じて従っていることが意外に多いものです。相手に望ましい行動を取ってもらうために、権威者の影響力を借りることも1つの方法です。

第6の原則:「希少性」

 人は、手に入りにくくなると、より貴重なものとして考える傾向があります。大量にあるものやいつでもできることの価値は低く見積もってしまいますが、なかなか手に入らないものや今しかできないことの価値を高めに考えます。自分の手に入りにくい希少なものであるほど、それを得ようとするのです。

 チャルディーニ氏の示した6つの原則は、シンプルで分かりやすいものです。組織内だけでなく、営業などの説得にも応用できる適用範囲の広い考え方です。

説得の基本原則
[画像のクリックで拡大表示]
説得の基本原則
(出所:日経クロステック)