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 新任課長の荒川さん(仮名)は部下の育成に悩んでいます。

 自ら成長しようと思わない部下の育成は大変ですね。そうした部下に指示を出すときには、事細かに指示をしなければ仕事が進みません。成長してほしいので、最初は丁寧に教えていたのですが、毎回同じようにしなければならないので、次第に面倒くさくなってきて、自分でやった方が早いと考えるようになってきてしまいました。これまでにいろいろと経験して学んでいるはずなのに、仕事の質が全く変わらないのです。「もっと経験を生かさなきゃダメじゃないか」と言いたくなります。部下が1つひとつの経験を確実に自分のものにして、仕事のレベルを高めていくためには、どのように指導すればよいでしょうか。

 日々の仕事の中には多くの学びの要素があるはずです。しかし、自分だけの力で経験を成長に結びつけられる人はごくわずかです。多くの人は、職場の上司や先輩に導かれることで経験から学んで成長していきます。実際の経験を通じて学んだことを体系化し、成長につながるサイクルを確立させるのが「経験学習」という考え方です。

経験学習とは

 経験学習とは、自分が実際に経験したことから学びを得ることです。単に経験するだけではなく、経験を次に生かすためのプロセスが重要であり、そのプロセスを理論化したものが「経験学習モデル」です。

 米国の組織行動学者であるデービッド・コルブは、学習段階を4つのプロセスに分けて提唱しました。このサイクルを回すことで、人は経験から学んで成長していきます。

[1]経験

 経験学習サイクルは、具体的な経験をすることが出発点です。自分で考えて動き、自分でその結果を受け入れることによって、たくさんの「気づき」が生まれます。自分では予測できなかった結果をもたらした経験に注目することが、成長につながります。

[2]内省

 自分の経験をさまざまな観点から振り返ることです。予測しなかった結果の理由や背景について、いろいろな角度から考えてみます。うまくいったのはなぜなのか、失敗の原因は何だったのか、を振り返って考えます。

[3]概念化

 自分自身の経験を振り返った後に、そこから何が学べたのかを考えます。経験を一般化、もしくは概念化すると、他の状況でも対応できる知識に経験を変換できます。自分の経験したことを、他の場面でも使えるように概念化し、将来、自分や他の人が使えるように教訓化するプロセスです。

[4]実践

 経験を他の状況でも使える理論として教訓化したとしても、知識が実際に使われなければ意味がありません。経験から学んだ知識を実践することで、一層の学びを得ることができます。まず実践してみて仮説検証のサイクルを速く回し、次の経験に生かしていくことが大切です。

経験学習サイクルを回すポイント
経験学習サイクルを回すポイント
(作製:日経クロステック)
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