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 チームリーダーの黒坂さん(仮名)は、メンバーに多角的な視点で物事を捉える力が足りないと悩んでいます。

 私(黒坂さん)のチームメンバーの仕事ぶりを見ていると、決まったことはできますが、例外的な対応や状況に応じた機転が利きません。目先のことばかりに気を取られ、次のステップやゴールが見えていないのです。1つの提案や方策しか考えておらず、別の案などは考えていないという状況です。

 私は事あるごとに、「もっと多角的な視点で考えてみたらどうだ」「問題に遭遇したときには、さまざまな角度で検討しなさい」とアドバイスしているのですが、効果が見えません。私としてもこれ以上、くどくどと言いたくはありません。メンバーが視点を多く持てるようにするためには、どうすればよいでしょうか。

 「業界のしきたりだから」「昔からやっていることだから」と、私たちは物事を特定の1つの視点からしか見ていないことがあります。気づかないうちに別の見方ができなくなっていることは、意外に多いものです。

 一方で、過去を振り返ってみたとき、当時とは全く別の考え方ができるようになっていることに気づくことがあります。それは視点が変わったからです。仕事で難しい状況に陥って必死だった当時は八方ふさがりだったけれども、今振り返ってみると、一歩引いた視点で冷静に考えることができます。

 相手の立場になって考えることも同様です。 自分の立場からは気づけないことが、相手の立場に立つと見えてくるのです。ある見方では正しいと考えたことも、別の視点から見ると間違っていたり、短期的には正しく見えたことが長期的には間違っていたりすることがたくさんあります。

 いかに視野を自由に扱えるか、視点を多く持つかが、ビジネスにおいて成功するための大切な要素なのです。

成果を出すための視点
成果を出すための視点
(作製:日経クロステック)
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虫の目、鳥の目、魚の目、コウモリの目

 ビジネスシーンにおいて、成果を出すために大切な4つの視点を紹介しましょう。

[1]鳥の目

 鳥のように空の上から地上を見下ろす目です。目先の物事にとらわれず、全体を見据えて、何が重要か、何を優先すべきか、今できることは何か、など総合的に把握する視野の広さを指します。

 森の中にいれば、木や花、草を見ることができますが、森自体を見ることはできません。森から出たことがなければ、森の存在すら分からないでしょう。例えば、旅行で目的地に向かって移動する場合、まず現在の自分の位置を知り、目的地までにどう進むか、どんな方法で移動するかを日程や地図を見ながら全体の流れを考えるということです。

 鳥の目で大局観を持った上で自分のビジネスが実際にどのように動いているのか把握することが不可欠です。何のためにこの仕事をしているのか、今自分は何をやっているのかを見失わないようにしましょう。

[2]虫の目

 虫のように細かいところまで正確に読み取る目です。物事を小さく細分化し、掘り下げて、細かく読み取る視点の深さのことです。

 問題とは、現状と「あるべき姿」のギャップです。「なぜその問題が起きたのか」「どのような要素によって構成されているのか」「どのような条件で起きるのか」など、より細かく掘り下げることで、真の原因を突き詰めることができます。

 現場で、目の前の問題に注力して観察します。実際に実在する物事を構成する要素に焦点を当て、丁寧に分析して、具体的な戦術やヒントを見つけることができる視点です。

[3]魚の目

 魚のように、川の流れや潮の流れを読み取る目です。流れとは、過去から現在、現在から未来へという、時の経過です。政治・経済の流れ、顧客・市場の動き、技術革新のトレンドを読み取る視点となります。

 消費者の価値観は目まぐるしく移り変わり、製品のライフサイクルは短命化しています。最近まで流行っていたものが、すぐに忘れ去られてしまいます。時代を読み解くためには、流れをしっかり見ていく必要があります。スピードを持って変化に対応していけるかどうかで、命運が分かれます。

 ビジネスの環境がどのように変化しているかを見極めるために、また変化の兆しを見逃さないためにも魚の目の視点が欠かせません。

[4]コウモリの目

 コウモリが逆さに止まっているように、物事を逆の視点から見たり、固定観念を疑って発想したりする視点です。「そもそもこの仕事は何のためにするのか」「業界の古い慣習にとらわれていないか」「誰も使わない資料を作っていないか」など、仕事の目的は何かを常に考えるようにしましょう。

 「なぜその仕事をするのか?」という問いに、「昔からやっているので」としか答えられないようなら、必要性を疑ってみましょう。いつも習慣で行なっている行動について、その行動自体が目的化してしまっていないかどうかを振り返ってみましょう。