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 菊池さん(仮名)は、今期から新たな事業を開発するプロジェクトチームを任されました。

 プロジェクトを開始して3カ月がたちました。ところが、メンバーが私の期待通りに働いてくれなくて困っています。メンバー個人の能力はあるはずなのですが、チームの中で持てる力を十分に発揮していないように見えます。私は「皆でこのプロジェクトを成功させよう」といつも叱咤(しった)激励しているのですが、全く響いていないようです。トップからも期待されているのに、これでは会社に顔向けができません。私には、プロジェクトリーダーとしての能力がないのでしょうか。部下が能力を最大限に発揮するように導くには私はどのようにすればよいでしょうか。

 集団で行動しているときに、「皆が頑張ってくれるから、少しくらい手を抜いても大丈夫だろう」などと思ったことはないでしょうか。

 重要な資料の最終確認をするときに、3人でチェックすると分かっていると、1人目は「後からまだ2人が見るから」と考え、3人目は「もう2人が見たから」と考えがちです。チェック回数が増えればミスを減らせるメリットがあるはずです。しかし、その一方で責任が分散し、皆が他の人がしっかりやってくれるだろうと判断して、1人ひとりの作業がおざなりになる可能性にも留意する必要があります。

 集団の中で仕事をするときには1人ひとりの責任や緊張感が薄れるため、無意識に力を抜いてしまうという心理効果が生まれやすくなるのです。

図●リンゲルマン効果を防ぐ方法
図●リンゲルマン効果を防ぐ方法
(作成:日経クロステック)
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リンゲルマン効果とは

 心理学者であり農業技師でもあったマクシミリアン・リンゲルマンが行った綱引きの実験があります。1人で綱引きをする場合と複数人で綱引きをする場合の2つのケースで、1人が綱を引く力を比較しました。

 1人で綱引きをするときの綱を引く力を100%とした場合、2人で綱を引いた場合の1人当たりの力は93%、3人で綱を引いた場合の1人当たりの力は85%、8人で綱を引いた場合の1人当たりの力は49%、という結果になったのです。

 人が集団で共同作業する場合、1人で作業するのに比べて、人数が増えるに従って1人当たりの仕事の効率が低下してしまう。これは「リンゲルマン効果」と呼ばれています。

 意識的に手を抜こうとしているのではなく、「自分がやらなくても誰かがやってくれる」「どうせ努力してもしなくても結果は同じ」と感じると、無意識に少しずつ手を抜いてしまう現象が起こるのです。しかし、本人には「手を抜いている」という自覚はありません。