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 森田さん(仮名)は、担当業務の経験の浅い浅井さん(仮名)の指導を任されています。

 浅井さんは、一生懸命にまじめに仕事をするのですが、仕事を抱え込みがちで、なかなか自分から相談や報告をしてくれません。これまで私は「分からなかったら、相談してね」と何度も言ってきました。「どうなってる?」と聞くと「大丈夫です」と答えるのですが、今回も締め切り直前に確認すると、「すみません。まだできていません」という返事。それを聞いてつい、「これで何回目? どうして相談しなかったの!」と思わず感情的になってしまいました。浅井さんをうまく指導するためには、どうすればよいでしょうか。

 「言い過ぎてしまった」「もっとはっきり言えたらいいのに」「相手の考えを優先し過ぎて疲れてしまう」……。こう思ったことはありませんか。

 自分の気持ちを率直に話したり、自分の考えをきちんと伝えたりすることは難しいと感じることは多いのではないでしょうか。職場でのコミュニケーションをもっと円滑にしたいと思う人は少なくないはずです。

 自信を持って人と接するためには、どうすればよいでしょうか。そんな会話を身につけたいと思っている人の「道しるべ」となってくれるのが、「アサーティブコミュニケーション」です。

アサーティブに伝えるポイント
アサーティブに伝えるポイント
(作成:日経クロステック)
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アサーティブコミュニケーションとは

 「アサーティブ」とは、自分と相手を同等に尊重しながらも、自身の意見や気持ちを適切に表現することです。どちらか一方が主張したり我慢したりするのではなく、互いに意見を交換し、Win-Winの関係を築く方法が、アサーティブコミュニケーションです。「アサーティブネス」や「アサーション」と呼ばれることもあります。

 アサーションを提唱した心理学者であるジョセフ・ウォルピ(Joseph Wolpe)は、人の自己表現のスタイルは大きく3つに分けられると述べています。

(1)攻撃型(アグレッシブ)

 このタイプは、自分自身の気持ちや意見を主張することができる一方で、相手よりも自分を優先したコミュニケーションをとりがちです。考えや意見が相手と異なると感情的になってしまい、自分の主張を押し通そうとする傾向があります。

 一方通行の自己表現となり、相手への配慮が不足することで、相手に対してあまり良くない印象を与えてしまう場合があります。結果的に、相手からの警戒心が強くなってしまい、自分の主張も受け取ってもらえないコミュニケーションになりがちです。

(2)非主張型(ノンアサーティブ)

 自分よりも相手を優先したコミュニケーションとなり、相手の意見を尊重し過ぎるあまり、受け身になってしまう特徴があります。相手の気持ちや意見について考えることができる一方で、自分の気持ちや意見を伝えることができないと感じ、ストレスをため込んでしまいます。

 周囲の目や評価を気にし過ぎて自己表現することを恐れ、相手を優先して自分の意見や感情を軽んじてしまいます。その結果、相手との対立を避けることができても、相手優先の判断となることで、誤った判断を招く可能性があります。

(3)アサーティブ型(アサーティブ)

 自分が話したいことを、攻撃的にも非主張的にもならずに率直に伝え、相手の反応を待って対応するコミュニケーションです。自分の気持ちや意見をはっきりと言うことができ、同時に、相手の気持ちや意見を尊重します。

 このタイプは、その場に合わせて適切な表現を選択することができ、相手の気持ちや意見を受け止めることができます。自分の意見をはっきりと主張できるとともに、たとえ相手と意見が対立したとしても、互いに納得できる結論を導くことができます。