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 品質管理課で課長を務める渋谷さん(仮名)からの相談です。

 チームリーダーの坂本さん(仮名)から「最近の若手は仕事を選ぼうとするから困ります。やりたい仕事以外はやる気が出ないという考えが組織で通用するんですかね」と不満をぶつけられました。坂本さん(仮名)は、キャリアアップのためには与えられた仕事にがむしゃらに取り組んで成果を挙げなければならないと信じており、若手社員が仕事内容にこだわることが理解できないようです。今後、坂本さん(仮名)には部下の育成にどのように関わってもらえばよいのでしょうか。

 せっかく仕事をするのであれば、もっと上を目指したいと考える人もいれば、仕事よりプライベートを大切にしたいという人もいます。会社のために働くことが大切だという人もいれば、独立して自分の力でキャリアを築きたいという人もいるでしょう。

 自社に精通したジェネラリストではなく、どこでも通用する市場価値の高いプロフェッショナルを目指したい人もいるはずです。そのためには、自分が速く成長できる仕事がしたいと考えるのは自然なことです。

 新型コロナウイルス禍で社会が大きく変化する中で、自分自身のキャリアや将来を見通せず、不安を感じる人が増えています。近い未来さえ予測困難な状況下で、管理者が自分自身のキャリアだけではなく、部下のキャリア開発についてもどのように考え直せばよいか悩んでしまうときに有効なフレームワークがあります。それは「キャリア・アンカー」です。

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キャリア・アンカーとは

 キャリア・アンカーとは、仕事や経歴を意味する「career」と船の錨(いかり)を意味する「anchor」を組み合わせた言葉で、人がキャリアを選択するときに最も重視する価値観や欲求などを組み合わせたものです。米国の組織心理学者であるエドガー・ヘンリー・シャイン博士によって提唱されました。

 キャリア・アンカーのタイプは、以下の8つに分類されます。

  • [1]専門・職能別:自分の技能・専門性が高まり、活用できることに喜びを見出す
  • [2]全般管理:組織の中で、責任のある役割を担うことに興味を持つ
  • [3]自立・独立:組織のルールや規則に縛られず、仕事のやり方を自分で決める
  • [4]保障・安定:職場に忠誠を尽くし、社会的・経済的な安定が第一である
  • [5]独創性:リスクを恐れず、クリエイティブに新しいことを生み出すことに意欲を燃やす
  • [6]奉仕・社会貢献:社会に貢献したり、奉仕したりするような人に役立つことを目指す
  • [7]純粋な挑戦:解決困難な問題や未知の分野への挑戦を追い求める
  • [8]ライフスタイル:仕事とプライベート、組織と個人のバランスを大切にする

 キャリア・アンカーを明らかにするためには、次の3つの問いについて深く考える必要があります。

  • 自分は何が得意なのか?:能力や才能に関するもの
  • 自分は一体何をやりたいのか?:動機や欲求に関するもの
  • 何をやっている自分に意味や価値を感じるのか?:意欲や価値に関するもの

 これらについてどのような自己イメージを持っているかによって、キャリア・アンカーが決まります。