品質管理部企画グループの石丸リーダー(仮名)からの相談です。
私は今年の4月から管理者として5人の部下を持つようになりました。上司として部下に仕事を任せていこうと思い、自分自身がこれまで作っていた資料作成を任せてみました。すると、大切な要点がいくつも抜け落ちているほか、ほとんどが自分が以前作成した内容のコピペになっているという状況でした。大事な会議への出席を部下に任せてみたら、最も確認しておいてほしい部分に「すみません、聞きそびれてしまって確認できていません」との回答。こうしたことが重なると、次からは自分がやったほうがよいかもしれないと考えてしまいます。部下にうまく仕事を任せて育てるためには、どうすればよいでしょうか。
皆さんは部下に仕事を任せるのは得意でしょうか。「仕事の目的や注意点などを説明している時間がもったいない」「重要な仕事は最終チェックを自分でやらなければならず二度手間になる」「仕事を任せてミスされると面倒だし、自分でやったほうが早い」……。部下に仕事を任せたいと考えているものの、結局は任せられずにあれもこれもと抱えてしまい、自分ばかりが大変な思いをしている。そう感じている人は少なくないのではないでしょうか。
忙しいからといって部下の育成をおろそかにすると部下が育たず、結局、仕事を任せられずに自分で抱え込んでしまうことになります。しかも、仕事を任せてもらえない部下はモチベーションが下がり、忙しい自分はいつまでも1つ上の業務ができないという悪循環に陥ってしまうのです。
限られた時間の中で管理者として本来の職責を果たすには、部下の力量や状況を判断して仕事を任せていくことが不可欠です。そうすることでチーム全体の士気も上がり、より高い成果を期待できるはずです。
なぜ部下に任せられないのか
部下に仕事を任せられない上司にありがちな考え方は、次のようなものです。
[1]部下に任せると結果が出ない
自分は部下よりも経験があって能力やスキルが高いため、自分よりも劣っている部下に対して仕事を任せられないという気持ちになりがちです。しかし、管理者の本来の任務は、部下が結果を出せるように育てること。部下が成長することでチームが成長し、1人で行動するよりも大きな成果につながります。
[2]教えることに時間をかけたくない
仕事を任せるには、仕事の流れやルールなどを教える必要があります。しかし、教育には手間と時間がかかるため、そんな余裕がないという人もいるでしょう。また、部下が失敗すれば、上司がフォローをしなくてはならないため、自分で全ての仕事を終わらせてしまうほうが楽だと考えてしまいがちです。早い段階から部下に仕事を教えて任せることで、今後の仕事を円滑に進めることができます。
[3]部下の仕事の進め方にストレスを感じる
部下に仕事を任せると、自分のやり方とは違う仕事の進め方をすることもあります。上司からすると部下のやり方は効率が悪く、気になってしまいます。自分の想定していた予定通りに仕事が進まずにイライラしてしまい、しまいには自分で仕事をやり始めてしまうことになってしまいます。 部下が上司の思った通りに仕事を進められないときには、仕事を任せるときの指示の出し方が適切だったかを振り返ることも大切です。
[4]自分の仕事を優先してできなくなる
部下に仕事を任せると、部下からの報告や相談などの時間が増えます。部下から突発的に相談されると、上司は自分のスケジュール通りに仕事が進みません。しかし、仕事を任せた場合、部下からの報告や相談は、ミスを減らしたりミスを早期に発見して対処したりするための大切な時間です。仕事の進捗に合わせたフィードバックが部下の成長には欠かせません。
[4]部下に気を使い過ぎている
部下に気を使い過ぎて仕事を任せられないケースもあります。任せた場合の部下の業務量や精神的負担に心苦しさを感じて仕事を頼みにくいと思ったり、仕事を任せることで部下に嫌われたくないと思ったりしているような状況です。しかし、上司は部下の代わりに自分が頑張ればよいと考えるかもしれませんが、それでは部下の成長につながりません。上司の仕事は部下を育てることだと認識して仕事を任せることが大切です。