経営企画室で7人の部下を持つ西島リーダー(仮名)からの相談です。
部下のAさんは、普段からさまざまな提案を意欲的に行います。ただ、私から見ると、「周囲の状況を踏まえて行動できていない」「関係者との調整がうまくできていない」「負けず嫌いでプライドが高い」など、「空気が読めていないな」と感じてしまうことが多いのです。いくらAさんの提案が魅力的だったとしても、組織全体の考え方や計画に沿わなければ断念せざるを得ないときもあります。そんなとき、Aさんは、「課長は、私のことを評価してくれていない」と周囲に不満を漏らしているようです。Aさんにはしっかりと経験を積ませて必要な能力を習得させるステップを踏ませたいと考えているのですが……。私は、Aさんをどのように指導・育成していけばよいでしょうか。
普段から、さまざまな提案を意欲的に行う部下を見て、「良いものを持っているのは間違いない。でも、もう少し下積みが必要だな」と感じてしまうことはないでしょうか。
仕事の現場で上司や同僚と衝突する、関係者とのあつれきがしばしば発生する、チームの方針と異なる行動をする……。これは部下自身の中に確固たる考えや意見があるから起きてしまう現象です。スピード感や決断力があるために周りの仕事ぶりに違和感を覚えてしまい、自分の考えと会社の方針が合わないと思って退職してしまうことにもつながりかねません。
これまでは企業が成長するためには、クオリティーの高い人材を多く集めることが必要とされてきました。しかし、変化の激しいこれからの時代に必要なのは、独自の構想力を持った「とがった人材」です。そうした人材をいかにして育てていくかが企業にとって重要になるのです。
とがった人材とは
とがった人材とは、人とは違った視点を持ち、人が思いつかないようなことを発案して、自ら実行できる人です。ヒット商品や新たなサービスを生み出すためには、他者にはない発想を生み出すとがった人材を見極めて受け入れ、活躍の機会を与えなければなりません。
従来の日本企業では、組織の和や慣習が重んじられる傾向があり、出る杭(くい)は打たれがちでした。人材の育成方法についても、得意なことをさらに伸ばすよりも苦手なことを減らすことに重きが置かれてきたのではないでしょうか。
長所を伸ばすことと短所を補うことはトレードオフ(相反)の関係にあります。すなわち、苦手で足りない部分を補うことに注力してしまうと、とがった個性を生かすことができず、逆に削ってしまうことになりかねません。従って、際立った個性や才能を持つ人間を埋もれさせることなく、能力を生かせる企業風土づくりや人材育成を進めることが大切になります。