入社7年目の営業企画部の大西リーダー(仮名)からの相談です。
私は、中部支社で営業パーソンとして働いていましたが、昨年、東京本社営業企画部に異動しました。初めてチームリーダーを任されたこともあり、しっかりと成果が出せる活気のあるチームにしたいと考えています。そこで、メンバーにやる気を持たせるために目標を与えて、常にその達成状況を確認しながら、成果が芳しくないメンバーに対しては厳しく指導を行いました。すると、チームの雰囲気はだんだん重苦しいギスギスしたものとなり、最近では仕事に必要なこと以外はほとんど言葉も交わさない状況になってしまいました。メンバー一人ひとりがやる気を持った活気のあるチームづくりを目指していたのですが、思いがけない状況になり、どうしたらよいのか困っています。
担当者として成果を上げてきた人がリーダーとして組織を率いる立場になったとき、どうすればメンバーがついてきてくれるだろうかとか、存在感を発揮して自分の価値を創出できるだろうかとか悩む人は多いのではないでしょうか。
組織の一担当として仕事をしていたときには、進むべき方向を上司が示してくれます。しかし、自分が組織を率いる立場になると、自分自身が方向を決めて伝える立場に変わります。そのときに「何をすべきか」「どうやるべきか」ということを言葉で伝えることの難しさに気づくものです。
「何をすべきか」「どうやるべきか」という判断基準は個人の主観です。別の言葉で言い換えると「志」であり、これがリーダーにとっての判断基準となります。
志がないリーダーシップでは、人々を導いたり束ねたりすることはできず、メンバーを惑わせるだけになってしまいます。
なぜリーダーには志が必要なのか
志とは、ある方向を目ざす気持ちであり、心に思って決めた目的や目標です。なぜリーダーには志が必要なのでしょうか。
[1]自分自身をリードする
リーダーがリードするのは、まず自分自身です。志は、リーダー自身が何を大事にして何を達成しようとしているかを明確にしたものです。リーダーが直面する困難を乗り越えていくための大きな推進力になります。
[2]関係者を巻き込む
志は、関係者を巻き込むために欠かせないものです。会社から言われたことをただ伝えるだけのリーダーよりも、自らの志を明確に語り、周囲に働き掛けながら行動するリーダーは、周囲の巻き込み度合いを高め、成果を挙げることができます。
リーダー自らが内発的な動機を持って取り組むことで、関係者の共感を呼び、結果として大きな巻き込む力を発揮することができます。
志を伝える大切さ
環境や市場を分析し、客観的なデータに基づいて考えることは大切ですが、論理的な分析だけでは組織を率いる上で十分ではありません。戦略を実行するのはあくまでも人であり、人が動くためには合理的な説明だけではなく、信頼や共感が必要となります。
リーダーが信念、すなわち志を語ることで、メンバーは心を動かされ、励まされて自分も最大限の貢献をしようと主体的に行動するようになります。論理的に根拠を積み重ねて戦略を立てたとしても、心の底から信じることができる志がなければ、信頼や共感を得られることはなく、たとえ実行に移っても成果を上げることはできないでしょう。
メンバーを動かすためには、リーダーが何を大切にして何をしたいのか、志を言葉にして伝えていく必要があります。