小屋裏を屋内空間化してプランやデザインに生かせるメリットから、木造住宅で屋根断熱の採用が広がっている。しかし通気の失敗による結露トラブルから野地板などが急速に劣化する例も少なくない。
事例1 「通気層」が単なる「空気層」
近畿地方の住宅地に建つ木造2階建て住宅。ガルバリウム鋼板葺きの屋根は、陸棟が比較的短く、方形に近い寄棟造りだ〔写真1-a〕。住宅に異変が生じたのは、竣工から約1年後の春。2階居室の天井に雨漏り跡のような染みが現れた。専門家が調査したところ、原因は屋根断熱の失敗による結露水だった。
染みの原因を調査したのは、主に近畿地方で住宅検査を手掛ける住宅検査関西・青山建築コンサルタント(大阪府守口市)の佐野公則代表だ。小屋裏に入ると、袋入りのグラスウールを垂木などに直接、タッカーで留めるなどした屋根断熱を確認できた。
さらに、断熱材を剥がして野地板を見たところ、板がぬれたように濃く変色したり、カビが発生したりしていた〔写真1-b〕。変色が顕著な北面の野地板の含水率は、最大で約40%に達した〔写真2-a〕。
「雨漏りなら野地板の変色は水の進入口を起点に扇状に広がるが、全体が均一に変色していた〔写真2-b、c〕。カビは空気の動きが少なく、常時湿った環境に発生しやすい」。佐野代表は結露を疑った理由をこう話す。
屋根断熱の通気も不十分で、結露の発生を裏付ける状態だった。陸棟換気や屋根通気層、壁の通気層などは設けてあったものの、隅棟に通気や排気の配慮がなく、空気の流れが妨げられていた。その結果、通気層が単なる「空気層」と化していた。