断熱層の複雑な配置や、通気部材の設置ミスによる通気層の遮蔽も、内部結露を招く原因の代表例だ。具体的な事例を紹介する。
事例4 換気面積を満たしても結露
「小屋裏で結露が発生している。瓦を金属屋根材に葺き替えた方がいい」。名古屋市内に立つ築16年の木造住宅に暮らす建て主は、後から屋根に載せた太陽光発電パネルの点検事業者にこう言われて驚いた。点検事業者は「改修費用は400万円ほど必要だが、100万円値引きする」と持ち掛けた。
不審に思った建て主は、屋根のトラブル相談を受けている神清(愛知県半田市)に改めて調査を依頼した。すると、同社も小屋裏の野地板が広範囲に著しくぬれ、軒裏に染みが発生している状況を確認した。
1階の台所が吹き抜けで2階につながっているうえに、断熱材と防湿シートの所々に欠損が生じていた。こうした状況から神清の神谷昭範常務は、「確かに小屋裏で冬型の結露が生じている。ただし、発生源は室内で発生した水蒸気だ」と判断した。
天井断熱と屋根断熱を併用
調査では、この住宅の小屋裏が複雑な断熱仕様になっていて、換気経路がつながっていないことも判明した。小屋裏の軒先周辺は天井断熱、吹き抜け部分は勾配に沿って屋根断熱、棟の頂部は天井断熱としていたのだ〔写真1、2、図1〕。
換気口として軒先と妻面に有孔板を設けていた。しかし、妻換気は軒先換気や屋根断熱の通気層とつながらない場所に設置されていた。妻換気は住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書(工事仕様書)が天井断熱用に示している換気面積の規定を満たしていた。しかし、「工事仕様書の開口面積を満たすための飾りにすぎなかった」と神谷常務は話す。
結露によるぬれが著しかったのは、北面の通気層から棟にかけてだ。この部分の垂木は含水率が40%を超えていた。野地板は室内側だけでなくルーフィング側もぬれており、くぎがさびていた。一方、南面は全体的によく乾いていた〔写真3〕。
神谷常務は「通気層と棟に結露が生じていたのは、軒先換気だけで通気している状態になり、水蒸気が通気層と棟にたまったからだ」と推定する。そして、北側に結露が集中している理由については、こう説明する。「日射を受けて南面の野地板が放出した水蒸気を北面の野地板が吸収して、乾かない状態が続いたからだ」
神谷常務は結露対策として、通気層とつながっている屋根断熱の棟頂部に、棟換気を設置するよう提案〔写真4〕。結露していた既存の野地板はくぎ保持力が残っていたので、そのまま使用した。改修費用は約30万円で収まり、結露も解消した。