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 ライドシェア大手の米ウーバーテクノロジーズ(Uber Technologies)に先んじて新規株式公開(IPO)を果たしたのが米リフト(Lyft)だ。だが、その株価は冴えない。両社の上場目論見書を読み込むと、ライドシェアビジネスの難しさが浮かび上がってくる。

(出所:米リフト)
(出所:米リフト)

 2018年12月期の売上高はウーバーの112億7000万ドル(約1兆2599億円)に対して、リフトはその約2割に当たる21憶5600万ドル(約2410億円)。同じ時期の営業損失額(赤字)はウーバーの30憶3000万ドル(約3387億円)に対して、リフトはその約3割の9億7700万ドル(約1092億円)――。

 リフトが2019年3月27日にナスダック証券取引所(NASDAQ)に上場し、ウーバーも2019年4月に上場申請したことによって、米ライドシェア大手2社の業績を正確な数字に基づいて比較できるようになった。

米ウーバーテクノロジーズと米リフトの2018年12月期業績の比較
カッコ内は前年同期比増減率、▲はマイナス
米ウーバーテクノロジーズ米リフト
プラットフォーム総収入497億9900万ドル(45%)80億5400万ドル(76%)
乗車回数52億2200万回(40%)6億1900万回(65%)
売上高112億7000万ドル(42%)21億5600万ドル(103%)
総支出143億300万ドル(19%)31億3400万ドル(77%)
営業利益▲30億3300万ドル(-)▲9億7700万ドル(-)
純利益9億9700万ドル(黒字転換)▲9億1000万ドル(-)

 両社の事業規模を理解するうえで最も重要な数値は「プラットフォーム総収入」だ。両社は雇用契約を結ばない一般人のドライバーと、ライドシェアを利用したい消費者とをマッチングする「プラットフォーム」を提供する事業者であると自社を位置付けている。消費者がプラットフォームを通じて支払った総額がプラットフォーム総収入であり、流通業における「流通総額」に相当する。

ウーバーの事業規模はリフトの6倍

 2018年12月期の実績では、ウーバーのプラットフォーム総収入が前年比45%増となる497憶9900万ドル(約5兆5675憶円)で、リフトのプラットフォーム総収入が同76%増となる80憶5400万ドル(約9004億円)だった。ウーバーの事業規模はリフトの6倍以上に達する。

 ウーバーが63カ国で事業を展開し、事業内容をライドシェア以外の食事配達や自転車シェアに広げているのに対して、リフトは米国とカナダを中心にしたライドシェア専業だ。こうした差が、両社の事業規模の差につながったもようだ。

 なおリフトは上場目論見書で、米国のライドシェア市場における同社のシェアが2016年12月の22%から2018年12月には39%に上昇したと主張していた。しかしウーバーのプラットフォーム総収入がリフトの6倍にも達したことから、米国では「リフトが主張する市場シェアは誇大過ぎるのでは?」という見方も広がっている。