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 マルチクラウドで巻き返しを図る国産ベンダー。大きな狙いは、ユーザーの基幹系システムの巻き取りだ。マルチクラウド化によるデータ活用ニーズへの対応は、そのための一手といえる。

 データ活用を進める戦略のなかで、自社クラウドへのデータ蓄積に力を入れるベンダーもある。

 KDDIは「KDDIクラウドプラットフォームサービス(KCPS)」上にオブジェクトストレージを用意し、様々なデータを収集、活用しやすくしている。KDDI ソリューション事業企画本部 クラウドサービス企画部の佐藤康広 企画1グループリーダーは「AWSのオブジェクトストレージであるS3のようにデータを引き出す際に課金されないし、AWSによるロックインも避けられる」とメリットを話す。

 NECは自社クラウドへのIoTデータの収集に注力。これまでもIoT向けのサービスやネットワークを提供してきたが、センサーデバイスの準備といったハードルが高く、ユーザーがなかなかPoC(概念実証)に取り組めない課題を認識。上坂事業部長は「従来のサービス範囲を拡大し、センサーデバイスやデバイスネットワーク、エッジまでもパートナーと一緒に提供することで、IoTデータの収集を加速したい」と意気込む。

 「自社クラウドにデータを集める必要がない」という真逆のマルチクラウド戦略を打ち出すのが日立製作所だ。たとえデータがメガクラウド上にあっても自社のデータ分析エンジンでデータ活用できるようにした。

 日立が4月から順次販売する「Lumada Solution Hub」は同社のデータ活用サービスである「Lumada」をAWSやMicrosoft Azure上で利用可能にする。ユーザーはAWSやAzure上に蓄積したデータに対して、その場でLumadaを使った分析やシミュレーションが可能になる。

日立製作所「Lumada」はデータのある場所にシステムをデプロイ
日立製作所「Lumada」はデータのある場所にシステムをデプロイ
ユーザーは所有データを移動することなく分析システムなどを構築できる
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 製造ダッシュボードや配送計画の最適化といった、Lumadaのユースケースをパッケージ化した「Lumadaソリューション」を登録したカタログを用意。ユーザーが所望のLumadaソリューションを選ぶと、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)上にLumadaソリューションに基づくデータ活用システムがデプロイされる。

 Lumadaソリューションの実体はデータモデルやデータ分析エンジン、個別アプリなどだ。これらは複数のコンテナや仮想マシンにわたってシステムとして実装されている。コンテナは基本的にコンテナ運用管理ツール「Kubernetes」上で動かすので、AWSやAzureではそれぞれが提供するKubernetesのマネージドサービスを使う。

 こうした“出張型”のサービスは、分析対象のデータを元の場所から動かしたくないというユーザーに向いている。ガバナンスの問題でオンプレミス環境からデータを出せない、AWSのS3にデータを蓄積したもののオンプレミス環境にコピーするには料金がかかるなど、データを移動したくない理由はいくつかある。

 IBMもDB2やWatsonをはじめとする主要ミドルウエアについて、コンテナ化したうえでKubernetesに最適化している最中だ。こうしたデータを移動させずに使える出張型は、必要なデータを集める手間が不要なため、PoCに取り組みやすいメリットがある。